2012年4月15日日曜日

Szemerediの定理・素数の等差数列

昨日まで述べてきたvan der Waerdenの定理を含む,より一般的な次の予想(現在では証明されている)がある:
「Erdős-Turan予想(On some sequences of integers, Journal of the London Mathematical Society 11 (4): 261-264)」$=$「Szemerédiの定理(1975)」

任意の正整数$l$と正の実数$\delta$に対して,正整数 $L(l,\delta)$が存在して,もし$L\geq L(l,\delta)$なら,$[1,L]$の任意の部 分集合$A$で,$\# A \geq \delta L$を満たすものは,$l$項からなる等差数列を 含む.

この主張からvan der Waerdenの定理を導くには,$N(l,r)$として,$L(l,1/r)$を取ればよい.

Szemerédiの定理は,K. F. Rothによる$l=3$の場合(1953)の,またSzemerédiによる$l=4$の場合の(1969)証明を経て示された. Szemerédiによる証明は組合せ論的なきわめて複雑なものらしい(読んでません.)Szemerédiはこの問題を含む多大な貢献により,2012年のAbel賞を受賞している.

H. Furstenbergが1977年にエルゴート理論を用いる証明を発表した(それは先日の記事に挙げたM. Einsiedler and T. Ward, Ergodic Theory: With a View Towards Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)に解説されている).

更にT. Gowersが2001年に,実調和解析に基づく証明を与えた.A new proof of Szemerédi's theorem, GEOMETRIC AND FUNCTIONAL ANALYSIS Volume 11, Number 3, 465-588. Gowersによる証明は$L(l,\delta)$の上からの評価も含んでおり,よってvan der Waerden数$W(l,r)$の評価も与え,例えば$l=4$の時なら$W(4,r)=\exp(\exp(r^c))$, $c$は定数,などである.これは昨日紹介した,Shelahによる評価を大きく改善する.

さて,以上の話とは少し毛色が変わるのだが,素数の分布の問題で,関連する重要な話題がある.Ben GreenとTelence Taoは2008年に,素数全体の集合上におけるSzemerédiの定理,と言うべきものを証明した(The primes contain arbitrarily long arithmetic progressions, Volume 167 (2008), Issue 2, arXiv:math/0404188v6 のTheorem 1.2).すなわち

「$A$を素数の集合で \[ \limsup_{N\to\infty} \frac{\#(A\cap [1,N])}{\pi(N)} > 0, \] ここで$\pi(N)$は$N$以下の素数の個数,を満たすものとする.このとき$A$は任 意の$k$に対して,長さ$k$の等差数列を無数に含む. 」

よって特に,論文のタイトルにもなっている,「素数全体の集合の中に,任意の長さの等差数列が存在する」ことも言える.

このGreenとTaoの論文については,小木曽啓示氏による,「混沌の中の秩序---素数列をめぐって」という素晴らしい解説があるので,そちらを是非ご覧頂きたい.

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