2012年1月30日月曜日

「理系のためのクラウド知的生産術」

堀正岳さんの「理系のためのクラウド知的生産術 (ブルーバックス)」を読了.200頁ほどの新書. 理系の研究者が,クラウド(特にこの本では,Googleの諸サービス,Dropbox, Evernoteの有名サービスの他,Remember the Milk, Skype, Mendeley, MindMeisterなど)を用いて,どのように仕事をするか,と言うことが紹介されている. 

こういったクラウドサービスを使っていない,と言う人には,まず最初のとっかかりを得るという点で本書をお勧めする.一方,既にそういったサービスに眉毛まで浸って生きている,と言う人には,そうでない人にクラウドサービスを紹介するときに,どのようにどのくらいのことを説明すれば良いのか,と言う基準を得るために本書をおすすめする. 

同書の書名から当然連想するのは,梅棹忠夫さんの「知的生産の技術 (岩波新書)」である.梅棹本の「はじめに」は今でも大変面白く,例えば
もっぱら研究の「やりかた」がまずいために,研究能力が低い段階にとどまったままでいる,ということがあるのではないだろうか.いわば,技術の不足にもとづく研究能力のひくさである.(5頁)
とか,
もっとも一般的な,研究者ならだれでも身につけていなければならないような,共通の基礎技術みたいなものについては,かえってだれも関心をはらわないのである.(6~7頁)
と言った指摘がある.

堀さんの本と,梅棹さんの本とで,扱っている事柄は実はそれほど変わらない.手帳,ノート,カード,スクラップ,ペンとタイプライタ,手紙,日記,原稿といったことで,それを野帳(フィールドノート)やB6カード(京大カード!)でやるか,クラウドでやるか,と言うことである.

私がこの手の技術書,最近の言い方ではライフハック関連の書籍を見るときに基準とする事が一つある.著者が何らかの内面的な困難に逢着し,それを解決する過程の一つとしてその技術に至ったのかどうか,である.堀さんの本では,「おわりに」に触れてあるように思う.