2008年12月20日土曜日

事態の推移を見守りたい:「emobileは人を騙す」

emobileは人を騙す」というblog entryを発見。emobileの1ユーザとして、事態の推移を見守りたい。

携帯電話の料金体系というのは大抵複雑怪奇だが、上記のエントリの記述を見ると、やはりemobileの自動チャージは、課金体系と整合していないように思う。少なくとも、「錯誤による契約無効」が主張できる余地があるように思われる。

私は自動チャージの設定をしていないし、クレジットカードの登録もしていない。webmoneyによるチャージにするつもりだったし、こういう話を聞くと正しい判断だったかと思う。

2008年12月18日木曜日

グールドのピアノ

私のこだわり人物伝 2008年4-5月 (2008) ヘルベルト・フォン・カラヤン 時代のトリックスター/グレン・グールド 鍵盤のエクスタシー (NHK知るを楽しむ/火)という小冊子をぱらぱらと眺めていたら、長くグールドのピアノの調律を勤めたエドクィスト氏の手記が掲載されているのを見つけた(翻訳・再構成は宮澤淳一氏)。

グールドはチェンバロによるヘンデルの録音「ヘンデル:ハープシコード組曲」を残している。大変親密な雰囲気のすばらしいアルバムだと思っていたのだが、なぜチェンバロで演奏したのか、ということについては深く考えたことはなかった。

エドクィスト氏の手記によると、実はこの時期、グールド愛用のスタインウェイCD318は、輸送中の事故により大破して工場送りになっていたという。落とされて上下さかさまになり、フレームプレートに4箇所ひびが入るほど非常に大きな衝撃を受けたと推測されている。「破損を発見した晩、グレンは私をつかまえ、少なくとも2時間にわたり、CD318に関する質問を浴びせかけ、不安をぶつけてきた」。

工場で新たに鋳造されたプレートをはめ込まれて返送されてきたが、「しかし音は変わっていた」。

その時点では、ピアノはスタインウェイから貸与されていたものだった。後にスタインウェイは、それぞれのピアニストに購入を求めた。グールドは、以前の音色を取り戻さなかったそのピアノを、何故か買い取ったそうである。

暖炉の傍で薪のはぜる音を聞きながら楽しむような雰囲気のヘンデルの録音だが、こういった逸話を知ってからだと、また違った趣を感ずるものである。



2008年12月13日土曜日

京都出張

12/8(Mon)--10(Wed)と京都出張。例年この時期に催される、整数論の研究集会に出席するためだった。

初日は朝六時過ぎの特急に乗って移動。9:15京都駅発の17系統に乗れれば10時開演に間に合うのだが、列車の遅れなどのため接続できず。9:30のバスで移動して、わずかに遅れて会場入り。初日はGalois表現に関するSerreの保型性予想に関するサーベイほか、Galois表現の話題が主。

昼食は、京都へ来ると一度行く体に悪いラーメン。だが、お店の定休日をいつも勘違いして、今回も定休日なのに店の前に。同道の知人から、同じ屋号の別のお店が近所にある旨を教わって、そちらへ移動。無事ありつけた。夜はとんこまさんと歓談。お付き合いいただきありがとうございました。

翌火曜日は、会場とその周辺を出入りしつつ、自分の仕事を進める時間をとる。昼食を北白川辺りの和食の店で済ませて、散策。お屋敷街で、色々と面白いのだが、人に話して伝わる面白みでないのが残念なところ。暖かい日で、自らの心の裡を見ながら歩く。夜は京大生協の書店を冷やかしたり。

水曜日は個人的に目玉の講演(数式処理ソフトMagmaの紹介)があった。しばらく前に、同講演の講演者に指摘されるまで知らなかったのだが、pari-gpの有理数計算が、他の計算ソフトに比べると遅いという事実。ちょっとショックだったのです。

もし読者の方の手元にpari-gpが使える環境があれば、sum(k=1,10^6,1/k)を計算して時間を計ってみていただきたい。そして他のソフトと比べてみてください。これについては未だにいろいろ試行錯誤しているところ。少なくとも、GMPを使ってCで書いても大して速くならないので、GMPの有理数計算がそれほど速くないということは言えそう(特に何の工夫もしない場合は)。

参考までに、7月に隣町のセミナでSageの紹介をしたときのプレゼンを再掲:

2008年11月27日木曜日

同名異人

同名異人、つまり、同姓同名を共有する異なる個人というのは、それほど珍しくもないけど、そういう人達が本を書いていたりすると紛らわしい。愛用するところのamazon.co.jpは、同姓同名の人間を同一視するようだ。本のお勧めのメールを見て、目が点になることがある:



↑は有名な作家とは別人。↓も、同名異人(と思う)。




2008年11月26日水曜日

有限アーベル群の自己同型群

そんなことも知らなかったのか,との誹りをおそれずエントリ:
有限アーベル群の自己同型群の位数を明示的に書くことが出来る.wikipediaに載っていた
論文は,Hillar and Rhea, Automorphism of finite Abelian groups, 
arXiv:math/0605185v1 [math.GR]

2008年11月21日金曜日

木曜日はセミナ:形式群

定例の隣町セミナ。今回はある種の楕円曲線に付随する二つの形式群の同型に関する講演。登場する対象が具体的で(形式的冪級数)、聞くたびに巧妙な構成に感銘を受ける。不思議なものである。

Buhler, Pomerance, Robertsonの論文(11/16のエントリで触れている)については、知っている人は知っているという事らしかった。実は、その後の調査で、私用の論文コピー整理箱からもコピーを一部発見した。ありがちな話ではありますが。

帰りの高速バスを待つ数分のうちに、書店で、バッキンガム、クリフトン共著「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」を購入。車中でざっと目を通す。個々人の特性を、34の「強み」(例えば、「アレンジ」、「運命思考」、「回復志向」、「学習欲」等)で代表させ、それを伸ばしていこう、という主張。表紙の裏面に、「強み」を発見するためのwebソフトのIDが掲載されている。

それなりに面白いのだが、もう少し簡潔にも出来そうな本である。


2008年11月16日日曜日

円分体の最大実部分体の類数

導手がlm乗である円分体の最大実部分体の類数をh^+(m)と書くことにすると,ほとんどすべてのl, mについて,h^+(m+1)/h^+(m)=1ではないかという予想(希望?)がある.

これについて,heuristicな議論をしている論文,J.Buhler, C. Pomerance, L. Robertson, heuristics for class numbers of prime-power real cyclotomic fields, Fields Inst. Commun., 41 (2004), 149--157を仙台滞在中に教わったので,メモ.リンクはGoogle booksで,先ほど試したら全文が見られた.ダウンロードできるわけでは勿論ないが…….

(11/20追記:C. Pomeranceのweb pageからダウンロードできる.)

仙台滞在中は,Google booksやオンラインジャーナル,著者らが公開しているプレプリントなどで,大分文献が参照できた.インターネットのありがたさである.

Amazon.co.jpでは書影が違っているので,指摘した.



2008年11月10日月曜日

パケット定額制廃止・EMobile導入

ここ数ヶ月、意図して携帯電話のパケット通信の使用(携帯電話でのウェブ閲覧)を控えてみて、実際にそれが可能であることを確認した。つまり、用もないのにGmailを確認したり、wikipediaのエントリを梯子したりというのを止めてみた。それで何の不都合もなく、月々のパケット通信料は100円を超えない。メールのやり取りも、もともと殆どしない(私にもっとも頻繁に送られてくるメールは、Google Calendarからのリマインダだが多くて日に数通、家人とはCメールのやり取り)。10月中旬にパケット定額制の廃止手続きをし、11月から適用になった。

auのダブル定額ライトは、月額1,000円を支払うことで、パケット代の上限を4,200円に抑えられるというものである。(ちなみに1パケットというのは128byte)。携帯電話会社からみると、データ通信でのAPRUの最低額を保障できる有難い制度であり、携帯電話のヘビーユーザから見れば、最大課金が定まっている安心できる制度だが、自分には関係ない。

その分で、EMobileのデータ通信専用端末D02HW(のアウトレット品)と、プリペイド型のサービスEMチャージを導入した。アウトレットの端末と1万円の事前チャージ込みで、17,800円。事務手数料無料のキャンペーン中。

EMチャージは、月々の基本使用料はなしで、1MBごとの従量制もしくは、1時間、1日、7日、1月の期限毎の定額制を、通信の際に選択するというプラン。手続きをしたのは11/1, 実際に端末が代引きで届いたのが、11/7であった。

端末が届いた後、オンラインでユーザ名などを設定するのだが、Firefoxを使っていたせいか、エラー処理でタイムアウトがおきたりした。IEで再度同じ事をして今度は無事終了。通信が出来ることを確認した。

冬に向けて、通勤で車中の時間も増えるし、出張も何件か予定していることから、通信手段の多様性を確保した。

2008年11月8日土曜日

BGMはEnigma: Seven Live Many Faces

締切のある仕事をいくつか抱えていて(締切のない仕事というのは形容矛盾のような気もするので、冒頭は白い白馬の類かもしれないが)、気晴らしにEnigmaの新譜を購入。Enigmaの「七つの命、無数の顔」。日本語タイトルだと違った印象だ……。実際はEnigma - Seven Lives Many Faces (Incl. Bonus Track) [Japan Version]
(←iTunes playerがインストールされていれば起動します)を経由してオンラインで購入した。良い意味で期待を裏切ってくれていて、大変楽しい。

初期のEnigmaの作品、例えばデビュー作の「MCMXC A.D.
」などとは大分趣が変わってきているなぁとの印象。グレゴリオ聖歌とダンスビートが当時は大変鮮烈だったけど、20年経っても変わらないというわけには行かないのでしょう。

木曜日はセミナ

定例の隣町セミナ。今回は関東方面からゲストをお招きして、虚2次体の円分Zp拡大の最大不分岐p拡大を岩澤理論から追及するという主題のレクチャ。大変勉強になる。

行きのバス車中で、パソコンを開いてお仕事をしいていたが、電池切れ。息抜きに書店によって物色していたが、多田富雄「寡黙なる巨人」が物凄い迫力である。著名な免疫学者であった著者が、出張先の金沢で脳梗塞に倒れ、右片麻痺、嚥下障害などに悩まされながらリハビリに励む姿を、自身の筆で述べたもの。能の深い素養が縦横に引かれており、幽玄ともいいたくなる印象と、肉体的な苦しみの非常に具体的な描写との対比が深い印象を残す。

2008年11月6日木曜日

水曜日の授業:数値解析学

前回に引き続き、実際にプログラムを書いてもらう実習。二分法の概略を復習した後で、実装してもらう。

20分程で一通り出来上がる受講生と、40分位経っても右往左往という受講生と、截然と分かれる。これぞまさしく二分法。

いささか時間が押してしまい、Newton法の原理を駆け足で説明。直感的には理解しやすいはずである。Newton法の実装には殆ど時間が取れなかった。

次回は出張のため一回休み。その間のレポートを出題し、Newton法の実装はその中に含めた。

2008年11月5日水曜日

火曜日は月曜日:4年生ゼミ

月曜が潰れがちな後期は、ときどき他の曜日に月曜の授業が入る。

4年生ゼミは難航中。ガロア理論は難しいのだなぁ、と再認識した。確かに、写像(自己同型)、群、体の拡大を見比べながら議論しなくてはならない。

それ以前の、きわめて基礎的な理解の欠如が見られることもあり、大鉈を振るうタイミングを計る昨今である。

2008年11月4日火曜日

ハイキング:海谷渓谷

文化の日の3日は,海谷渓谷(732高地と昔は言ったらしい)へハイキング.所属山岳会のメンバ3人とその知人他で総勢6名.山岳会のメンバは幾度も来たことがある場所.

新潟県糸魚川市を流れる海川が削りだした渓谷で,人によっては「頸城の上高地」あるいは「越後の上高地」などなど言うらしい.烏帽子岳,鉢山,頸城駒ヶ岳,鬼ヶ面山など怪異な山容が大変目を引く.また,奥には金山・裏金山が控えている.雨飾山や焼山も至近.

今回は1時間半ほど歩いて,河原で豚汁を頂こうというハイキング.海川を渡る箇所は,巨岩がごろごろするところを歩く.所々,登山道の一方が高く切れ落ちているところもある.

道なりに歩くと,登山道から目的地の取水施設が見えるところに出る.あぁ着いた着いたとそのまま歩くと河原を通過することになるが,実はそちらではない.取水施設が見えたら左手に上る道があって,そちらを辿ると河原歩きなしで目的地に着ける.

河原で温かい豚汁を腹一杯頂いて,午後から時折日も射す晩秋の沢沿いを歩いてきた.

2008年10月30日木曜日

水曜日の授業:数値解析学・方程式の数値解

今日は計算機の並んだ部屋で、実習。

前回のアルゴリズムの表記法を実際にC言語で書いてみる、更に、方程式の数値解法(二分法)を学び、それもCで書いてみる、というのが目標。テキストの「理工系の基礎数学 (8) 数値計算」の二章。

ところがプロジェクタが不調だったり、何故か私の環境でだけcygwin上のgccでのコンパイルがうまくいかなかったりと、手間取った。リンカがcrt.oがないような事を言うのだが、学生諸君は正常にコンパイルできるし、謎である。古い環境変数でも残っているのか……。

というわけで、思ったとおりには進まず、次回へ持ち越しとなった。

受講生諸君(主に3年生)は、前期で学んだC言語の講義で、教科書として高橋麻奈「やさしいC 第3版 [やさしいシリーズ]」を使ったらしい。数年前にその授業を担当した際、同書をテキストにしたのは私である。C言語の教科書は非常に沢山あるが、初等的なレベルからC言語の仕様をほぼ網羅していること、内容に誤りが少ないこと、ここの環境に依存する記述が少ないこと、などの理由から、初学者にはお勧めである。


2008年10月29日水曜日

火曜日の授業:洋書購読・相貫円柱

例によってDaepp, Gorkinのテキスト「Reading, Writing, and Proving: A Closer Look at Mathematics (Undergraduate Texts in Mathematics)」で洋書購読。演習問題の一つが、相貫円柱の共通部分の求積。

半径1の円盤を底にする高さ1の円柱が2本、軸を直交させて交わっているとする。共通部分の体積を求めよ、という問題。一旦図形を把握できれば、高校生程度の微積で答えは出る。この演習問題を担当した学生も、そつなく解答していた。

歴史的には、アルキメデスがこの図形の求積を行っている。

この図形の側面の面積を求めること、軸が直交する三つの円柱の共通部分の体積を求めること、更に正四面体の頂点から面への垂線を軸とする円柱の共通部分の体積を求めること、などなど、いい気晴らしになりそうな問題。

2008年10月28日火曜日

月曜日の授業:4年生ゼミ

先週に引き続き、体とGalois理論の辺りで難渋している4年生ゼミ。体の自己同型群の剰余類と、部分体の対応など、亀の歩みで勉強してもらっている。

一つの分水嶺であり、是非越えていって欲しいものであります。

2008年10月23日木曜日

水曜日の授業:数値解析学

各種誤差の話と、テイラー展開による近似計算、誤差項の評価など。また、アルゴリズムの表記と、それをC言語で書いた場合のサンプルを提示。

この授業で教科書にしている、高橋大輔著「理工系の基礎数学 (8) 数値計算」では、特定のプログラミング言語での実装例は掲載されていない。逐次処理と、条件分岐と、繰り返しさえあれば殆ど用は足りるので、言語が何かといったことは枝葉だと考えられる。

一方で、講義で取り上げるとなればプログラム例を示さないわけにもいかない。今回はアルゴリズムの表記をCにしたサンプルを提示し、次回以降実習していく予定。

2008年10月22日水曜日

火曜日の授業:洋書購読

午後は洋書購読。演習問題にアナグラムの問題があり、思わず考え込んでしまう。考え込んで、しばらく苦悶すると回答が思い浮かぶのだが、なぜそれが思い浮かぶのかは謎のままである。文字の順列組み合わせのうち、英語として可能な並びを、特に発音から絞り込んでいるような気がするが、気がするだけである。アメリカの地名が回答なので、学生諸君にはちょっと難しかったらしい。

アナグラムの生成は、ちょっとした辞書ファイルがあれば機械的に出来る。Wordsmith.orgというサイトを発見。アナグラムを自動生成してくれる。

テキストはこんな調子でゆったりとしているものの、解答を詳細に書き下すことの重要さを強調するなど教育的で良い。Daepp, Gorkin, Reading, Writing, and Proving, UTM, Springer. リンクはamazon.comへのもので、Look INSIDE!で内容が少し読める。


2008年10月20日月曜日

原稿提出、4年生ゼミ

10/20締め切りの原稿が一つあり、週末から本日に掛けて仕上げをして、夕方提出。講演予稿なので、引き続き講演の準備に移る。

午後は4年生ゼミ。体の拡大とGalois理論の節だが、やはり難しい模様。有理数体の代数閉包の部分体に話を限っているので、分離性などは考慮しなくて良いなど、状況は単純化されている。しかし、難しい点が二点あって、すなわち
  • 体の自己同型群というものが想像しずらい
  • 多項式環の剰余環としての体と、有理数体の代数閉包の部分体の区別と同一視
といった辺りが障害になっているように思われる。自分が勉強したときもそうだった。

どうやって腑に落ちたかというのを思い出そうとする。が、時間が経つうちに自然なことに思えてきた、というどうしようもない結論。

2008年10月16日木曜日

水曜日の授業:数値解析学

水曜日午前は3年生向け数値解析学。

今日は整数の2の補数表現、浮動小数点数だけで終了。数をどのように表現するかと、数そのものは関係がないということを強調した。例えば同じ1, 0の並びでも、それが2の補数表現された整数なのか、IEEE754に則った浮動小数点数なのか、によって表す数はぜんぜん違う。

テキストにしているのは、高橋大輔「理工系の基礎数学 (8) 数値計算
」(amazon.co.jpでは書名が正しく入っていない。カタログ情報の更新から連絡済)。

数学的に厳密であるよりは平易であることを目指しているようで、その目標は達成されていると思う。また、連立一次方程式の解法が最後に述べられていて、これは「なぜ連立一次方程式を数値的に解きたいか」という動機付けを優先させた為、とある。

2008年10月15日水曜日

火曜日の授業:洋書購読

先週から後期が始まった。
月曜に4年生ゼミ、火曜日午後に3年生洋書購読(2コマ)、水曜日午前に数値解析学、が時間割。

火曜日の洋書購読は、前回のオリエンテーションに次いで2回目。テキストは、Ulrich Daepp, Pamela Gorkin, Reading, Writing, and Proving: A Closer Look at Mathematics (Undergraduate Texts in Mathematics). Springerのシリーズ、UTMに所収の1冊。

高校・大学初年級の数学から、より高度な数学への橋渡しをするという本だが、内容は大変平易。G. Polyaの「いかにして問題をとくか」の手順を噛み砕いて、「do math」へと読者を導いている。

このクラスでは、本書の内容はもちろんのこと、英語の文献を読むこと、ゼミの練習として、黒板の前で話すことなどをトレーニングする。3年生8名が受講している。






2008年10月6日月曜日

公園散策

From 富岩運河環水公園

富岩運河環水公園を散策。

土曜日は娘と、日曜は家人も加わり三人で。
土曜日は暑いほどの陽気だったが(写真はその日の公園全景)、日曜は一転やや肌寒い。

お祭りがあって大変な賑わいだった。九月末に出来たスターバックス、両日とも大行列。

2008年9月30日火曜日

集中講義その2

9/24(水)から土日を挟んで9/29(月)まで、勤務先にて集中講義。1年生から4年生までの数学科の学生が受講する.内容は線形代数.講義内容は担当教員の裁量が大きいのだが、微積分もしくは線形代数の予習復習と位置づけることが多い模様だ.

15回を1週間でまとめてやってしまうので、いろんな話をするよりもメッセージを絞り込んだほうが良いと考えた.

  • 線形代数はベクトルと行列の学問ではなく、ベクトル空間とその間の線形写像の学問である
  • 基底を取ることで、数ベクトルと行列が表れるが、それは基底の取り方による「かりそめの姿」


なので、ベクトル空間の公理的な取り扱いから初めて、部分空間、基底、線形写像、行列表示、基底の取替えによる表現行列の変化などを主に扱った。例としては、一定次数以下の多項式の全体、所謂線形リー環など。


内積や固有値・固有ベクトルの話は触れる程度.グラム・シュミットの直交化法もやらずじまい.

タネ本にしたのは,斎藤正彦先生の「線型代数入門 (基礎数学 (1))」だが,その他いろいろな本を参考にした(基底の個数の一意性など,どのように扱うか微妙な話題については特に).

今の1, 2年生は,下記の本を教科書にしているらしい.

2008年9月23日火曜日

Vandermonde行列の逆行列

Vandermondeの行列式(リンクはWikipedia)というのは、線形代数の初歩で(行列式の辺りで)必ず出てくるもの。

以前から疑問だったのは、この行列式が0でないとき、その行列式を定める行列の逆行列を明示的に書き下す式があるか?ということ。

文献を検索していて、たまたま、Victor-Emil Neagoe, Inversion of van der Monde matrix, IEEE Signal Processing Letters vol.3, No. 4, 1996, pp.119--120 という論文を見つけた。望んでいたそのものだ。

しかし次の疑問は、この事実が1996年まで知られていなかったのか?ということ。Gene Howard Golub, Charles F. Van Loan, Matrix Computationsには、逐次的に逆行列を計算するアルゴリズムが記載されている(リンクはGoogle Books, 同書p. 184--参照)。

Google booksによるwidget: BloggerではJavascriptを書けないので消去.

Amazon.co.jpへリンク:

2008年9月16日火曜日

火曜日の授業:数学通論I

学生の皆さんは絶賛夏期休業中ながら,私は今週から後期開始と言ってもほぼ過言ではない.

今週は,隣県某大学にて,教育系の大学院生向けの集中講義.内容は初等数論と暗号.今日の午後から始めて,金曜の夕方まで.自宅からキャンパスまで,高速バスとバスを乗り継いで,片道2時間少々.連日往復するのはつらいので,宿泊することにした.

来週は,勤務校で,数学科対象の集中講義.1年生から3年生までが聞きに来るとのことで,内容は線形代数とその応用の予定.(なので学会は欠席です).

2008年9月10日水曜日

W. Byrde, Sellinger's Round, by G. Gould

ウィリアム・バード(W. Byrde, リンクはWikipedia)は16--17世紀にイギリスで活躍した作曲家。タリスより1世代若い。カトリック教徒として当時は迫害されたが、ミサ曲やモテットの他、鍵盤楽曲にも優れた作品がある。

その中で私が偏愛するのは、Sellinger's Roundという曲。Glenn Gouldが残した録音が大変すばらしい(バード&ギボンズ作品集(紙ジャケット仕様))。

Youtubeに、この曲をBGMにした映像(トロント市内をドライブする映像)を見つけたので掲載。音質は良くないものの、清冽さは紛れもない。



2008年8月31日日曜日

数学者の死

いささか旧聞ながら、Henri Cartan(リンクはWikipedia)が8/13に逝去していたらしい。享年104歳。ブルバキ創立メンバーの最後の一人だったという話。Science Newsに追悼記事が出ている。Bloombergじゃないから、大丈夫(あちこちで報じられたが、BloombergがS. Jobsの訃報を誤って配信した)。

Cartanは代数トポロジーから多変数複素関数論まで広く活躍した数学者だが、私個人はあまり意識することなく、資料としてCartan-Eilenberg, Homological Algebra (Princeton Landmarks in Mathematics)を書棚に並べているくらい。Cartanの直接の学生としては、Douady, Godement, Karoubi, Serre, Thomがいるという(上記Wikipedia)。それだけで驚異。

先日は、可換環論・代数幾何の永田雅宜先生も逝去された(リンクはWikipedia)。反例作りの名人としても有名で、確かAuslanderが、「早く証明しないと、永田が反例を作ってしまう」と弟子達に発破をかけていた、らしい。何かで読んだのだが。
学部の学生の頃、「可換体論 (数学選書 (6))」の初めの2章を苦労して読んだ記憶がある。

マルクス・ジョルジュの「異星人伝説―20世紀を創ったハンガリー人」に掲載のエルデシュ語によると、"They left"ということになるだろう。偉大な数学者達に R.I.P.

2008年8月25日月曜日

原田泰治展

富山県水墨美術館(このURLは?)で開催中の,原田泰治展に出かける.家人と娘と3人連れ.

小学生の高学年の頃,朝日新聞日曜版の一面が,この人の絵と文だった.その時は特にどうとも思わなかったが,今となると少年期の追想と相まって,やはり懐かしいような気がする.

つまり,それ自身の存在で芸術として成り立つと言うよりは,見る人の裡にある思い出を想起させ,それにまつわる感情を刺激することで成り立つ絵画のように思った.マンハッタンやハワイを描いた大きな絵があったが,それはあまりピンと来ない.

だからといって価値が低いと言っているわけではなく,それを求める人が居て,それに応える画家が居て,まずは慶賀すべき事と言わねばならない.

2008年8月23日土曜日

夏休み中の授業:SPP

絶賛夏休み中だけども,夏休みなのは学生の皆さんのみである.8/22(金)はSPP(Science Partnership Project)の授業を一つ担当.朝9:30から午後4時過ぎまで.1コマ50分で5コマ少々話した.対象は,県内某高校の2年生7名.

昨年も別の高校の1年生を担当したのだが,初等数論のさわりを話したところ,あまり好評ではなかった模様.話が抽象的すぎると受け止められたらしい.

今年は,中身はあまり変わらないが,暗号の話としてまとめた.のだが,時間がおしてしまって,肝心のRSAやElgamal暗号のあたりが駆け足になってしまい,反省.

剰余算(modular arithmetic)を,公差が等しい等差数列の加減乗算として導入してみた.同値関係や演算のwell-definedであることに言及しなくて済む.集合を元と見るという飛躍も,なんとなく受け入れてもらえたように思う.如何.

2008年8月22日金曜日

矢野顕子コンサート

8/21, アイザック小杉文化ホールラポールで矢野顕子のコンサート。家人と。
端的にいって、天才。

話の流れで、たまたま聴きにいくことになった。私は矢野顕子のファンというわけでは全然なく、家人が持っているCDを何枚か聴いたことがあるくらいである。

コンサートは、ピアノ弾き語りの形式。生音ではなく、PAを通している。

セットリスト
  1. BAKABON
  2. Dreaming Girl
  3. さようなら
  4. 雷が鳴る前に
  5. My Love
  6. 愛について
  7. Song for the Sun
  8. 変わるし
  9. 湖のふもとで猫と暮らしている
  10. ?
  11. ごきげんわにさん
  12. ごはんができたよ
  13. Rose Garden
  • EC1 David
  • EC2 ひとつだけ
クラシックからジャズ、現代のさまざまなジャンルの音楽が渾然一体となって、矢野顕子の音楽としか言いようのないものになっている。聞いていると、複雑な形をした光の立体が刻々と形を変えるようなイメージが目に浮かぶ(単純化して書くと、Windows Media Playerとか、iTunes playerの視覚効果を立体にしたようなもの)。演奏の最中にときどき歌詞が飛んでハミングになったり、ピアノパートが伸びたりするのはご愛嬌である。

クラシック音楽のように、大枠があって、それを身につけたうえで個性を出すというジャンルの音楽の対極にいるアーティストだと思った。音楽を吸収して再構成し、それを演奏するという巨大な能力の上に成り立っている、一回限りの存在である。そういう意味で、天才である。

糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」で、坂本龍一相手のインタビュー「矢野顕子について坂本龍一くんと話そう。」が行われている。その第四回で坂本は端的に「天才でしょう」と語っている。

演奏中のMCは、かなりたわいのない話に終始していた。リラックスした雰囲気であった。

2008年8月19日火曜日

ハミング「研究にどう取り組むべきか」

符号理論を勉強すると必ず目にする、ハミング距離などに名前をのことしているRichard Hammingが、1986年に行った講演「研究にどう取り組むべきか (You and your research)」の日本語訳が公開されている。

今津さんの「第一級の仕事に関するリチャード・ハミングの観察と考察」というエントリを参照。原文(講演筆記)と、その邦訳がリンクされている。

「非常に意義深い研究と認知されるようなもの」、「ノーベル賞級の研究」をする為の指針を明快に論じている。曰く、重要な研究をする、研究に対して途方もない情熱を注ぐ(真に第一級の仕事をするのに必要と思われる深い傾倒)、正しい方向に努力する、他の人が土台に出来るような研究をする、読まれるような論文を書く、云々。

ハミングの著書、「Art of Doing Science and Engineering: Learning to Learn」の最後の章が、同じタイトルである。残念ながら絶版との事で、Amazon.comのSearch Inside!で瞥見したのみ。Kindleならすぐに読めるらしい。

2008年8月12日火曜日

大日岳(富山県・2501m)登山

2008/8/10(日), 所属山岳会(ジャンダルム山岳会, リンク修正8/18)の山行で、大日岳(富山県・2501m)に、称名滝登山口から日帰り。会員が私を入れて4名、入会希望者が1名の計5名であった。

登山口出発が6:40, 下山したのが18:30頃と、12時間行動になってしまった :) しかし、久々に全力で夏山を登り、愉快痛快。

登山道は一本道で迷いようがない。牛ノ首付近で両側が切れ落ちた露岩帯の通過があるのに気をつけなければならない。今回は夕方まで晴天だったが、稜線や大日平付近で雷雨に遭うと大変恐ろしいことになるだろう。

写真は↓

2008年8月2日土曜日

木曜日はセミナ・Hasse第二回

午後一で、SPPの事前打ち合わせ。高校生向けに、大学の理系学部の教員が最新の科学のトピックスを解説し、実験実習などを指導するという催し。もう四~五年にわたって実施されているように思う。

昨年までは、実施のお世話をする委員だったのだが、今年はそちらはお役御免。講師として参加する。例によって暗号の話。

実施高校二校の先生方総勢十数名と、理学部の担当教員十数名とが、講義内容や、高校での授業進捗度などの細かいすりあわせ。

終わってすぐ、隣町でのセミナの為移動。HasseのAbel体の類数に関するモノグラフを読む会2回目。私にとっては、ドイツ語の勉強にもなって大変有難い機会である。

終了後の会食では、志村先生の自伝「記憶の切繪図―七十五年の回想」について話が弾んだ。

2008年7月30日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ・最終回

大学院講義は最終回。結論は、二次体における素数の分解法則。円分体での分解法則には言及できなかった。残念。

午後の4年生ゼミは、さんざん発破をかけまくって、小野孝先生の「数論序説」の1章まで終了。ガウスの相互律までである。普段は17時前に終わるのだが、今回は、終わってみたら18時を回っていた。きりのいいところまで読んだけど、夏休み明けにすっかり忘れて帰ってくるのが目に見えるようだ :)

2008年7月29日火曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理・最終回は暗号

自然と情報の数理の最終回。前回の次回予告では、微積分学を取り上げるつもりだった。しかし一回の尺で収めるにはテーマが大きすぎるようで、手が止まってしまう。

数学が現代の社会で役に立っているという実例の一つとして、現代の暗号を取り上げることにした。話の構成はありきたりだが、シーザー暗号、頻度解析、ヴィジュネル暗号、公開鍵暗号といったところ。

ヴィジュネル暗号の解読法を、バベッジ(階差機関や解析機関の人)が編み出していたという話は大変面白い。

今回のネタ本は、定番ながら、サイモン・シンの「暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2)」、「暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)」。包括的に、しかも内容にも踏み込んでいて、大変読ませる。未読の方にはお勧めです。








久々に山歩き:蓮華温泉から白馬大池

日曜日は久々に山歩き。梅雨も明けたし、夏山シーズンです。登り三時間少々の、蓮華温泉から白馬大池までのコース。所属山岳会のメンバで、私を入れて4名。

朝5時集合、蓮華温泉から歩き出したのは七時半ごろ。大池には10時半ごろ到着。
11時半ごろに下山にかかり、途中土砂降りになってしまって、蓮華温泉に戻ったのが午後2時前。

ほんとに歩けるか、少々不安だったものの、特に支障なく降りてこられて一安心。
でも夏山の怖さ。下山の際に、午後1時過ぎから土砂降りの雷雨。
すでに樹林帯まで降りていたものの、やはり雷は怖い。
稜線を歩いている人もたくさんいただろうから、彼ら・彼女らは気が気でなかったろうなぁ。

入浴は姫川温泉にて。以前も来たことがあるけど、鄙びた様子に拍車がかかっているような……。

2008年7月24日木曜日

水曜日だけど月曜日:自然と情報の数理・方程式論の700年

月曜日が海の日でお休みだったので、水曜日が月曜の時間割。今回の自然と情報の数理では、方程式論を取り上げた。

2つの円錐曲線の交点として、3次、4次方程式の解が得られるというのは、12~13世紀のイスラム数学者に知られていた。これは現代の目で見ても興味深い事実。

一方で、解の公式が発見されるのは16世紀。更に、方程式を解くというのがどういうことなのかが詳細に検討され(ラグランジュ)、群論の萌芽へとつながる。そしてアーベルとガロアによる決定的な結果がもたらされる。実際には、その仕事が広く理解されるようになるまでもう少し時間がかかるのだが、その辺は割愛。


2008年7月23日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ

大学院の講義。二次体と円分体の整数環、整数底、判別式など。少なくともこれらの体での素数の分解法則くらいは解説したいところだ。

4年生ゼミは、代数的整数の環が導入され、また相互法則の証明に向けて、アーベル群の指標を定義。直交性など基本的事実を確認。前期のうちに、相互法則の証明はなんとかカバーできそう。

2008年7月19日土曜日

木曜日はセミナ:100円PC

木曜日隔週の隣町でのセミナ。今回は同僚某氏に講演を依頼。

セミナの常連メンバの某氏が、100円Eee PC、というもの持参していたので見せていただく。PCそのものは、量販店の店頭で見たことがあり、その際は、いわゆるノートPCと比べると見劣りがする印象だった。しかし実際に使う状況で見てみれば、それなりに使えてしまうようにも見えた。

ネットトップというジャンルのノートPC市場が急速に立ち上がりつつあり、私自身はその推移を興味深く見守っている、というところである。5万円を切れば手を出すという層が存在することが分かったわけで、メーカも黙ってはいまい。

更に移動体通信を商売にする会社が興味を示すのは当然である。上述の100円PCのように、5万円を切る価格の端末ならば、無料のような値段で配っても、回線使用料に広く薄く転嫁して回収することが出来る。携帯電話会社がやってきたことである。インターネットプロバイダだって同じようなことをはじめるかもしれない。

このサイズのノートPC(ネットトップ・ネットブック)が、家電量販店で買ってくるものではなく、携帯電話小売店やオンライン通販で「機種変」するものになるというのは十分ありそうな話である。

面白くないのは、従来のPCメーカ(普通のPCが売れなくなる)、Microsoft, Intelあたりだろうけど、そもそも家庭向けPC市場は、飽和状態にいたってもう数年経っているように見える。


2008年7月15日火曜日

月曜日の講義:自然と情報の数理・イスラム圏の数学他

イスラム圏の数学の幾つかの結果を眺める.

まず冪和の公式.カラジーによる,1^3+2^3+3^3+...+10^3 = (1+2+3+...+10)^2 の証明.初等的な(正方形の面積と,グノーモンの面積の)考察から鮮やかに結果を導く.更に,ハイサムによる結果は,3乗和に限らず,k乗和の公式を帰納的に求めることが出来るものである.17世紀のBernoulliの結果に先立つこと500年以上である.

次いで,2項定理と数三角形(別名,パスカルの三角形)の話.これも,インドや中国では古くから知られていた.パスカルはむしろ,最後の発見者と言っても良いくらいかもしれないが,数学的帰納法を現在の形に書いた功績によって名が残っているのだと納得しても良い.

最後に,ハイヤームらの3次方程式の解法(円錐曲線の交点として)を話す予定だったが,時間切れだった.

ルネッサンス期の数学に直結するような結果が多数見られ,大変興味深い.
今回もカッツの「カッツ 数学の歴史」に大いに依存した.



2008年7月9日水曜日

火曜日の講義:大学院と4年生ゼミ

大学院講義は、円分体(素数分体の場合のみ)の基本的なこと。判別式や、部分体の計算などを紹介した。

4年生のゼミでは、一応Silvermanのtaxi cab numberに関する論説を終了。後は小野孝先生の数論序説の続きで、原始根のあたり。

月曜日の授業:自然と情報の数理・中世までの世界

ギリシャ・ローマ世界を後にした。中世までの世界各地の様子をざっと眺めて、各地の各時代でどんな数学が行われていたかを瞥見しようと思ったけど、さすがに荷が重かった。インド、イスラム、中国の10~11世紀ごろまでの歴史を超要約するので精一杯。

主だった数学については次回触れて、ルネッサンスにヨーロッパで数学が復興する話をしたい。
準備がますます大変な昨今です。包括的に一冊にまとまった本として、「カッツ 数学の歴史」が大変便利。

今回は、11世紀終盤から12世紀に活躍したとされる、オマル・ハイヤームの名前が出てくる。放物線と円の交点として三次方程式を解いたりしていて驚く(この方法で三次方程式を解くのは、歴史上何度が行われている。角の三等分も、コンパスと定規に方法を限らなければ出来るということも知られていた)。

ハイヤームの「ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)」は、中学生の頃にたまたま読んだ。私たちは皆、明日をも知れぬ身なのだから、せめては旨い酒を飲んで今夜は楽しく過ごしましょう、という、厭世的とも刹那的とも言えるが、大変印象深い四行詩集である。そういうものを読んで興じている中学生を見て、流石に親は心配していたようである。






2008年7月3日木曜日

木曜日はセミナ:Sage紹介

隔週の隣町でのセミナ.今回はスピーカを仰せつかり,Sageの紹介をした.

Sageは,W. Steinさんを中心として開発が進められている,オープンソースの数学用ソフトウエア.既存のソフト(pari/gp, GAP, singular, maxima,...)を構成要素として,Pythonで一つにまとめたような作り.プログラムは実質Pythonで書くことになる.

詳しくは以下のプレゼン資料をご高覧下さい.

火曜日の講義:大学院と4年ゼミ

大学院講義は,円の素数分体の初歩的な話と,トレース,ノルム,判別式など.素数分体はGalois群がよく分かるので部分体もよく分かるが,更に有理数体上の生成元をGauss和で書く(Gauss周期)のが目標だがもちろん一回ではそこまで話せなかった.

4年生のゼミは多項式の話.体上の多項式環がユークリッド整域ということだけど,なんだか難航していた.毎年やってるじゃないか,とこちらは思うが,学生は毎年入れ替わっているので,それは詮無いことである.

月曜日の授業:自然と情報の数理・アルキメデス以降のギリシャ数学

アルキメデス以降のギリシャ数学をざっと概観する回.エラトステネスやアポロニウスはもちろんのこと,パッポスとかメネラウスとか,高校生の頃に聞いたような名前が出てくる.

世界史的にも,ローマが共和制から帝政に移り最大版図を誇る激動の時代であり,キリスト教が普及していく時期でもあり,大変興味深い.

プトレマイオスのアルマゲスト(コペルニクスの頃まで,天文学の典拠資料だった)とか,ディオファントスの「算術」(バシェのラテン語訳に,フェルマーが残した注釈が,いわゆるフェルマーの最終定理の発端だった)など,ヨーロッパの中世が射程に入ってくる印象である.

次回はイスラム圏,インドの数学をやるつもりだけど,ギリシャ・ローマ社会と違って予備知識がほとんどないので苦労しそうだ.



2008年6月26日木曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理・アルキメデスの仮想天秤

アルキメデスの仕事のうち、放物線の切片(放物線上の二点A, Bを結ぶ弦と、放物線そのものが囲む領域)の面積の求積の方法を紹介するのが今回のテーマ。

一つは、汲み尽くし法(method of exhaustion)によるもの。弦の上に三角形(もうひとつの頂点Cは、弦と平行な接線が放物線と接する点)を書き、弦の上に別の三角形(もうひとつの頂点は、A, Bにおける接線の交点)を書いて、切片を挟み込む。後は同じ操作を、内側の三角形の二辺について繰り返すのである。この際、今の操作で作った三角形全部の面積と、一つ手前の操作で作った三角形全部の面積との間に、1:4の比例関係があることがわかる。したがって、放物線の切片の面積は、一番最初に書いた三角形ABCの面積の4/3であることがわかる。

この証明は、高木貞治の「解析概論」の第三章冒頭に再録されていて、大昔、大学に入ってまもなくの頃に読んで非常に感銘を受けたのを覚えている。


次に、「方法」冒頭の、仮想的な天秤を用いた議論。どのようにして放物線の切片の面積の公式にいたったかを、アルキメデス自身が詳らかにしたものである。

「方法」では更に進んで、この仮想天秤の方法で回転放物面の切片の体積などを求めている。このとき、現在の定積分のRiemann和による定義に肉薄しているということが、最近のC写本の研究で明らかになった、というのが、斎藤憲「よみがえる天才アルキメデス―無限との闘い (岩波科学ライブラリー)」やネッツ・ノエル「解読! アルキメデス写本」の一つの核心になっている。

この講義ではそこまでは踏み込まず、次回は地中海世界のその後の主要な数学(エラトステネス、アポロニウス、ディオファントス)を見て、イスラム、インド世界を見て、中世ヨーロッパへお話を進めたいところ。



2008年6月23日月曜日

類数の可除性,非可除性

昨日のセミナに,某大学の院生の方がインタビューに来ていた.が,あまり時間が取れずじまい.本日は勤務先に来ていただいて,私が研究テーマにしている,2次体・2次拡大の類数の可除性・非可除性についての概観を,僭越ながら講義.

午前中は11時過ぎから始めて,結局夕方17時頃まで.問題の発端(Gaussの予想)から,ほぼ時系列で,得られた結果やそのための手法,一般化の試みなどを,主要な結果について概説を試みた.自分としても,頭の中にあることを整理してアウトプットするのは大変よい機会であった.ただ,記憶で話した部分については不正確なところも多々あり,文献などで修正していただきたい(ここを見ていたら).

話しておしまいではなく,書いたものにすればいいのだが(そしてそう言う企画が実はずっとあるのだが),なかなかその儀にいたらず,我ながら歯がゆい所である.

木曜日はセミナ:HasseのKlassenzhal

隣町でのセミナ.今回は常連メンバによる,H. Hasse, Uber die Klassenzahl abelscher Zalhkoeper, 第一章の解説.いわゆるAbel体の解析的類数公式の証明を概観.今後数回で,本書全体をカバーする予定だそうな.ドイツ語が不自由な私には,もの凄くありがたい企画である.

以前,サマースクールでこの話題を担当したことがあるので,その際の資料を見ながら聴講.

某大学の院生の方が,私を含むセミナの常連メンバにインタビューに来ておられたのだが,上記の講義の後はあまり時間が取れず.

いつもは21時の高速バスで帰宅しているのだが,それにも間に合わず,久々にJRの特急に乗った.そして着いてみると市電も終わっている時間で,ざぁざぁ降り.やむを得ずタクシに乗る(ナンバプレートは見なかった).当地で言うところの,「たかつく」(高くつく,の意)半日となった.

2008年6月19日木曜日

火曜日の授業:大学院講義と4年生ゼミ:Galois理論とtaxicab number

午前中の大学院講義は、平方剰余記号の練習問題をいくつか。更にGalois理論の復習。今月の数学セミナー数学セミナー 2008年 07月号 [雑誌])を宣伝するのを忘れた :)

午後は4年生セミナ。教育実習帰りの学生はお疲れの様子。x^3+y^3 = Aというタイプの楕円曲線の加法をねちねちと。結合法則は、「面倒で長い計算」により証明されるという。まぁ、そうなんだけども。

月曜日の授業:自然と情報の数理:円と螺旋

アルキメデスの仕事の解説。実際に「円の計測」の最初の命題(円の面積は、底辺が円周に、高さが半径に等しい直角三角形Eの面積と等しい)を証明。証明は、一方が他方より大きいとして矛盾を導くのを双方の不等号に対して行うもの。議論は、いわゆる取り尽し法。

後半は、「螺旋について」から。アルキメデスの螺旋の最初の一周を書き、終点をθとする。中心Nからθまでを半径とする円も書く。θで螺旋の接線を引き、Nθに直行する直線と接線の交点をAとすると、AZは最初の円の円周に等しく、よって直角三角形ANθの面積は(上の「円の計測」の定理より)半径Nθの円の面積と等しい。

これも、示したい等式が成り立たないとして、不等号を仮定して矛盾を導くというのを二回やるのである。結構長い。時間内に終わらず、一方の不等式が成立しないことは次回に先送り。

今回はプレゼンテーションスライドなしで、黒板でみっちりやった。受講者の諸君は、少々当惑気味の様子 :)

土曜日:秋葉原でミーティング

翌土曜日、宿泊先のホテルの部屋で、揺れを感じる。長い周期で、比較的大きく感じた。8階にいたせいか。上越や能登の震災を思い出し、すぐにテレビをつけてみる。実際に画面が出るまでの時間(地上波デジタルなのだ)が長く感じられる。

当初の報道では、まだ情報が集まりきっていないためか、それほど切迫した様子は感じられなかった。支度をして、御茶ノ水の書店街へ繰り出す。駿河台を下る。明治大学と日本大学(旧カザルスホール)の建物を口をあけながら見上げた。Srinivasaの「Algebraic K-Theory (Modern Birkhauser Classics)」がPaperbackの廉価版で再発されているのを発見。携帯電話越しに、Amazon.co.jpのカートに入れる。(売値が全然違うのだ)。

大学時代の友人と、昼前に秋葉原で落ち合う約束だったので、移動。以前の秋葉原は、食事は知る人ぞ知るようなお店しかなく、喫茶店もファストフードくらいしかなく、その意味では殺伐としていたが、ダイビルやUDXが出来て大変改善された。食事を取りながらいろいろ情報交換。更にエクセルシオールで話し込む。NetBeansとか、Rootとか。HotSpotの電波を掴めて好都合だった。14:30頃解散。

地震の影響で、上越新幹線にも遅れが出ているという情報を拾えたが、詳細が分からないので東京駅まで移動。10分少々の遅れで出発。19時頃帰宅。

都内でのセミナに出席

6/13(金)は、都内某所でのセミナに出席。ζ関数の解析接続や関数等式に関する新機軸のお話であった。数学は留まっていない、ですね。
御茶ノ水の、定宿の一つに泊。

夜は旧友らと会って、久闊を叙す。

2008年6月11日水曜日

火曜日の授業:代数学特論と4年生ゼミ・Euclidの議論

代数学特論では,平方剰余記号の第1, 第2補充法則,相互法則の証明など.特にひねることなく,Gauss和を用いたスタンダードな証明を紹介.更に計算例.

pが4で割って3余るときは,法pで平方剰余な数の平方根を与えるのは易しい,というのを最後に紹介していて,詰まってしまった.あれ,どうしてだっけ,と考えているところに,正午のドン(時の記念日).心臓が止まるかと思った.しかしそのお陰か,解決.

午後の4年生セミナ.Euclidによる,素数が無限個あることの証明を精密化する話.さらに,Silvermanのtaxicab numberについての有名な論説に入った.次回もこれをやる予定.

月曜日の講義:自然と情報の数理・Archimedes

月曜日の自然と情報の数理,Euclidを卒業して,アルキメデスの仕事の紹介に入った.
今回は,歴史的な背景や,有名な逸話などを紹介して「円の計測」,「螺旋について」の結果のみを紹介.

「円の計測」では,与えられた円の面積が,高さが円の半径,底辺が円の周長に等しい直角三角形のの面積と等しいことを述べている.さらに,「螺旋について」では,後者の直角三角形が,螺旋の接線を斜辺とする,ある直角三角形として得られることを述べていたりする.

準備をするのに,斎藤憲,「よみがえる天才アルキメデス―無限との闘い (岩波科学ライブラリー)」に大きく依存した.

斎藤氏は,ネッツ・ノエルの「解読! アルキメデス写本」にも登場し,また同書の解説も書いている数学史の研究者.ネッツとノエルの本で,アルキメデスに夢中になってしまった人が頭を冷やすにはちょうどいい本かもしれない.ネッツとノエルの本では,アルキメデスにスポットライトを当てるあまりに,エウドクソスなどが些か等閑に付されている気味があると.


それにしても,2,3回の講義でどうまとめるか,かなり頭を悩ませている.放物線の切片の求積と,「方法」で述べられている仮想的な天秤の紹介をして,後は立体の求積,ストマキオン,……うーむ.主に文系の学生向けと言うことで,現代の言葉で結果を得るのに,微積分を使うのも少々気を遣いながら,と言うことになりそう.



岩明均の漫画「ヘウレーカ (ジェッツコミックス)」も,もちろん史実に材をとった伝奇ロマンと言うべきものだろうけど,なかなか面白いです.





2008年6月7日土曜日

木曜日はセミナ

隣町でのセミナ。例によってメンバの一人と雑談しつつ。ナルキェビッチ著「素数定理の進展 (上)」の話など。私は木曜の昼休みに買ったばかりで読んではいないけど。

高速バスの停留所が、ドトールのまん前に移動していた。しばらく時間があるので、私はドトールでパソコンを広げてお仕事。一時間ほど集中して作業できた。ドトールしばらく前から完全分煙化(喫煙席とは透明なパーティションで区切られた)、居心地が大変良くなった。

今回のスピーカは、某大学のD2の方。関数体の類数のことは以前ちょっとかかわったことがあり、大変興味深く拝聴した。終了後の懇親会の席で、私の勤務先から、同大学の大学院へ進学した方の消息も聞けた。元気な様子で何より。

上掲の、ナルキェビッチの本、文献表が「主要なもの」のみに削られていて、完全版はシュプリンガーのwebからダウンロードすることになっている。その旨が、同書の文献表のページに脚注であるのだが、まだ公開されていないようである。ちなみに原書はこちら。なぜかAffiliateの検索で引っかからない。

2008年6月4日水曜日

火曜日の授業:大学院講義と4年生ゼミ、A Proof that Euler Missed

午前中は大学院の授業。代数的数の全体が体になること。Legendre記号を、(Z/pZ)^*の位数2の指標として導入して、第一、第二補充法則と相互法則を述べ、計算の仕方を解説するところまで。証明は次回。

午後は4年生ゼミ。4人中2人が教育実習で不在の為、短い英文の論説を読んでもらう。1つは、Tom Apostol, A Proof that Euler Missed: Evaluating ζ(2) the Easy Way, Math. Intelligencer, 5(3), 1983.
タイトルどおり、ζ(2)=Σ n^(-2) = π^2/6 を簡単な積分の計算で示すもの。

以前、Calabiによるというsuper ultra simple proofというのを見たことがあったのだが(Zagierの論説だった記憶がある)、Googleで検索して見つかったのは、R. Chapman, Evaluating ζ(2). (PDF).

もう1つは、J. M. Aldaz and A. Bravo, Euclid's Argument on the Infinitude of Primes, Amer. Math. Monthly, 110, 2003. こちらははじめのパラグラフを読んだあたりで、次週持越しとなった。

こういった、小粒でもぴりりと言う趣の記事を集めておくと、ふとした時に役立つ。まとめて、いずれ公開しようと思う。

2008年6月3日火曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理、さらばEuclid

自然と情報の数理は、前回積み残した完全数の話から。1+2+...+2^nが素数なら、それをpとしたときp*2^nが完全数であり、偶数の完全数はこの形に限ることを、一通り証明。これで一時間ほど使ってしまった。

本題は、Euclid原論XIIから、円の面積や錐体の体積などの話だったのだが、駆け足になった。Euclidの原論では、例えば円の面積の公式が与えられているわけではない。二つの円が与えられたとき、それらの比は、直径の上に立てた正方形の比に等しい、といった表現である(その比が、円積率であり、我々はそれが円周率πと等しいことを知っている)。

証明は、取り尽くし法を用いた巧妙な議論で、本質的に実数のアルキメデス性を用いており、読みながら、そうそう、そうなんだよ、などと深く納得するのであった。古代ギリシャの数学者と意思の疎通ができたような気がするのである。

Euclidの原論はこのくらいにして、次回からはアルキメデスの仕事をいくつか紹介する予定。参考資料のつもりで買った、ネッツ・ノエル共著「解読! アルキメデス写本」が猛烈に面白く、土日で読了。アルキメデスの著作を収めた現存唯一の写本が、如何に歴史の中を生き抜いてきたか、そしてきわめて状態の悪いこの写本から、如何にして内容を読み出すか、そしてその内容が、古代ギリシャの数学への認識を激変させるさまが述べられている。巻を置く能はず、という調子でした。



2008年5月31日土曜日

GMPからforkしたMPIR

GMPからfork(分岐)したMPIRというプロジェクトが立ち上がっている。まだ成果物は公開されていない。SAGEを率いるWill Steinさんのblogで知った。

GMP(GNU Multiple Precision Arithmetic Library)はGNUプロジェクトの一つで、多倍長の整数、有理数、浮動小数点数の演算を実現するためのライブラリを提供している。CPUに応じて、基盤となる演算をアセンブラで書いてあるなど、高性能であることもあって普及している。

幾つかの商用の数学ソフトウエア(Mathematica, Maple, Magma)などでも使われているし、例えばpari-gpのようなフリーの数学ソフトウエアにも組み込まれている。また、多倍長演算を言語の規格に組み込んでいるLisp/Scheme処理系でも多く使われているし、rubyやpythonなどにも使われている。

ところが、GMPの開発体制に次のような意見があった:
  • GMPはリリースの間隔が長く、不定期で、また間が空きがち
    • 新しいアーキテクチャのCPUが市場に出回っても(例えばcore2duoなど)、それに対応したバージョンがなかなか出てこない
  • Microsoft Windows上のネイティブな開発環境(Visual Studio)がサポートされていない
  • 同様に、MacOS Xのサポートも十分とはいえない
  • 公開されているcvs/svn/tracサーバなども無い
  • ライセンスがLGPLで、営利企業にとっては使用する敷居が高いことがある
これらを解消するために、新たなプロジェクトMPIRを立ち上げたとのことである。プロジェクトのフォークは、開発者の二分と、それによる進捗の遅れなど懸念されることも多い。うまく収束してくれることを願う。

なお、GMP4.2.2をCore 2 Duo環境でコンパイルするためのパッチが複数公開されている。

2008年5月29日木曜日

Ubuntu debut (FreeBSD 7.0 and Ubuntu)

仕事の合間を見て、FreeBSD 7.0の環境を整備中。例によってVMWare Workstation 6.0 on Microsoft Windows XP上の仮想マシンである。ウィンドウマネージャー(いまだにWindowMaker)が立ち上がるくらいになったら、後は実際に仕事をしつつ、必要になったパッケージを導入。CVSから書きかけのファイルをcheck outして、それがTeXのファイルならteTeXやispellや、そもそもemacsも、という調子。

昨日ふと思い立って、最近人気のLinux distributionの一つ、Ubuntuに手を出してみる。「VMWare用仮想マシンのダウンロード」というページから、仮想マシンを頂いてくるだけ。インストール作業すら省いて、プレインストールのパソコンを買ってくる感覚である。

なんと言うことも無く立ち上がり、なんと言うことも無くディスプレイのサイズを変更し、なんと言うことも無くアップデートして、8.04 Hardy Heronになった。どのくらい真面目に使うかは不明。

火曜日の授業:大学院講義と4年生ゼミ、Euclidの論法

火曜日は午前中、大学院講義。有限体の乗法群での具体的な計算をデモンストレーションして、平方剰余記号の相互法則に向けて、代数的数や代数的整数を導入。ほとんど、小野孝「数論序説」をなぞる形になっている。

午後は四年生のゼミ。教育実習の為に四人中二人が不在なので、短めの論説を幾つか読もうと思った。が、来るはずの一人が来ない。仕方ないので、マンツーマンで論説の一つを解説し、進路に関して相談というか、雑談。

Euclidによる、素数が無限個あることの証明は、こんな具合だった。始めのs個の素数を持ってきて、それらすべてを掛けて1足した数Qの素因数は、s個の素数のどれとも異なる、と。始めに用意した素数の最大のものと、Qの間には少なくとも1つ素数がある、ということが示されているわけだが、これをもっと改良できるよ、というのが、上掲の論説の内容である。

2008年5月27日火曜日

Facebook debut

FacebookのUIが日本語化されたということをきっかけに、登録してみた。まだ本当に登録しただけ。Gmailのアドレス帳から知り合いを探してくれるというのでやってみたら、一人だけ発見した。

正直なところ、これが何故web OSの最有力候補とされているのか、理解できていません。

月曜日の授業:自然と情報の数理

今回はEuclid原論から、初等数論にあたる部分をかいつまんで解説した。VII巻とIX巻。

内容は今の視点から見ると大変平易なもの。しかし原文では、文字式というものが使われていないので、なれないと非常に読みづらく忍耐が必要。もちろん解説の際には適宜現代風にアレンジして話してはいる。

今回準備していて、アルトマンの本にあったのだが、Euclid自身はいわゆる「算術の基本定理」に言及していないらしい。これは、任意の自然数が、素数の冪積にただ一通りに表される、という主張である。同書によれば、近い主張はIX巻の命題14, 平方自由な自然数の場合を扱ったもの。

最初に証明を与えたのはGaussだそうだ。高瀬訳「ガウス 整数論 (数学史叢書)」(書影がないとはどういうことか?)の第2章16節に「定理:どのような合成数もただ1通りの仕方で素因子に分解される。」とある。証明の冒頭に、一通りにのみ分解されるという事実は、「たいていの場合、不当にも暗々裏に仮定されている」とある。



前回のプレゼンテーションスライドを公開し忘れていたので追記した。)




2008年5月21日水曜日

火曜日の授業:大学院講義と4年生ゼミ、Ramanujan family planning?

大学院の授業は、主に有限体の乗法群が巡回群であること。離散対数の定義、n冪剰余の取っ掛かりの部分。原始根の求め方、離散対数の求め方などアルゴリズミックな話は先送り。ElGaml暗号やDSAの話も、このくらいの予備知識でできるけど、時間の都合で割愛。

午後は4年生セミナ。群論の復習。来週から4名のうち2名が教育実習のため3週ほど不在になるので、その間は短い論文や読み物(Math. IntelligencerAmer. math monthlyに掲載されたものなど)を読んでもらう予定である。

その内の1つとして、J. H. Silvermanの論説Taxicabs and sum of two cubesを配った。HardyとRamanujanとに関する有名な逸話があって、いわゆるタクシーのナンバープレート1729の話である。1729=10^3+9^3 = 12^3 + 1^3と、2つの3乗数の和に2通りに書ける最小の数だ、とRamanujanが喝破したという。他にこのような数が無いか探すことは、x^3+y^3=Aが複数の整数点を持つAを探すことと同じだということから、楕円曲線の有理点ないし整数点へと話を広げていくのが、Silvermanの論説。

セミナを解散した後で、これに関連する論文が無いか探していたところ、Ken Onoの論説RAMANUJAN, TAXICABS, BIRTHDATES, ZIPCODES, AND TWISTSも見つけた(リンクは同氏のweb pageで公開されているバージョン)。Ramanujanの別の仕事に、1729の並べ替えである2719が現れる。すなわち、二次型式x^2+y^2+10z^2により表されない奇数のうち最大なものが、2719だ、というところから、半整数重みの保型形式と志村対応などへと話を広げていく。

というのはまじめな数学の話。Ono氏の論説の前振りが愉快だった。RamanujanのLost notebookの編纂に尽力しているB. Berndtという数学者が居る。彼の一番下の娘が1972年生まれなんだそうで、これも1729の並べ替えになっている。「偶然なのか、それとも"Ramanujan family planning?"の例なのか?」。一人声を上げて笑ってしまった。

2008年5月20日火曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理

今回もEuclid「原論」の第I巻から、平面幾何の話。二等辺三角形の二底角は等しいとか(5)、二底角の等しい三角形は二等辺三角形である(6)とか、三角形の合同条件(二辺挟角(4)、三辺相等(8))など。括弧内の番号は、原論I巻での定理番号。

興味のある方は、例えばEuclid's Elementsなどご参照のほどを。Java appletを多用して議論を分かりやすく解説してあります。

とはいえ、やはり原典に手軽にアクセスできると便利なので、中村幸四郎他「ユークリッド原論」を購入。Heiberg編集のEuclid全集第1巻から第4巻までに収められている「原論」からの日本語訳。「原論」の日本語訳があるというのは、考えてみれば凄いことであり、それを手元に置くというのは嬉しいことだなぁ、と一人悦に入る。これは縮刷版で、以前学生のころ、箱入り上製本を入手するのを躊躇したのを思い出す。

ついでにガイドブックとして、アルトマン「数学の創造者―ユークリッド原論の数学」も入手(なか見!検索あり)。この本は、取り上げている命題が必ずしも本文中に述べられていないので、「原論」が手元に無いと少し読みづらいかもしれない。

次回以降は、Euclid「原論」から数論の話題などを取り上げる。原論は今月中までとして、来月以降は別の話題に移ろうと思う。



(2008/05/27追記:プレゼンテーションスライドを掲載し忘れていたので上掲追加。)




2008年5月14日水曜日

火曜日の授業:大学院講義と4年生ゼミ

午前中の大学院講義は、主に中国式剰余定理(これをCRTと略すのはどのくらいポピュラーなのか?)。これでEuler関数の乗法性も従う。ついで体の乗法群の有限部分群は巡回群という主張に入り、証明の途中で時間切れ。次回は証明を完結させて、平方剰余や冪剰余、相互法則の証明などやって、初等数論は終わりにしたい。でも五月中はこれで目一杯かも。

午後の4年生ゼミでは、群が導入され、群の集合への作用、商集合を定義。GL(2,Z)の無理数への一次分数変換での作用と連分数展開とのかかわりの話。

2008年5月13日火曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理

恒例の「自然と情報の数理」。今回は、Euclidの原論第一巻の初めのほうを紹介した。大体どんな雰囲気か知ってほしかったのだ。

「定義」をゆっくり説明していたら、教室の活性が大分下がってしまった。本文に入って、例えば最初の、「与えられた線分を一辺とする正三角形を与える」というのを、「さぁ皆さん考えてみてください」と言ったら、ぐっと活性が上がる。こういう反応を見られるのが、講義をする楽しさの一つだ。

プレゼン用のスライドは以下のもの。スライドの4枚目から9枚目の「定義」の部分は、箇条書きの番号が通し番号になっていたのだが、今見たらページごとに1から始まってしまっている。OOo ImpressでPowerPointに変換したときか、はたまたGoogle Spreadsheetの制限なのか、不明。






2008年5月10日土曜日

twitter debut

遅ればせながらtwitterデビュー.こちら.Follow me :)

Twitterはいわゆるマイクロブログ(micro-blog). 数十文字程度の短い書き込みを重ねていくもの.通常のサイズのblogよりずっと小規模で,一方IMほどinstantでないというニッチなんだけど,ずいぶんポピュラーになってきた模様.

木曜日はセミナ:1-2-3

木曜日は隣町でセミナ。学期中は隔週で、前回に引き続き二度目。

今回もメンバの一人と高速バスで同道となり、四方山話。最近の本の話になって、偶然ながら二人とも「The 1-2-3 of Modular Forms: Lectures at a Summer School in Nordfjordeid, Norway (Universitext)」を持っていておかしかった。持っているというのは、どちらも鞄の中からその本を取り出した、という意味で。楕円modular型式、Hilbert modular型式、Siegel modular型式についてそれぞれZagier, Bruinier, van der Geerが入門を執筆し、さらにHarderによる彼自身の名前のついた予想について解説している(上記amazonへのリンクをたどると、「なか見!検索」が可能)。

この時間のバスで移動すると、セミナ開始まで1時間ほど余裕がある。早めに会場入りして自分の仕事をするか、あるいは本屋など巡るかはそのとき次第。自分の住んでいる町にも、紀伊国屋書店ができたので、以前ほど本屋巡りに時間を割くことはなくなってきている。

今回は、今日店頭に出る新書を探しに書店へ行った。齋藤孝・梅田望夫「私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))」を購入。1階のCD売り場が無くなって、書店の売り場が増えていた。

セミナは二本立てで、密度濃く勉強。いつもより少し時間が延びたので、参加者が顔をそろえての夕食は中座することになってしまった。


2008年5月8日木曜日

jsvi, vi-clone written in pure JavaScript

IDEA*IDEAで紹介されていた,JavaScriptで書いたvi clone, jsvi. viはUnix互換環境で広く用いられている(用いられていた?)テキストエディタ.編集モードと閲覧モードの切り替えがあるとか,カーソルの移動がhjklだとか,現在の目から見るとちょっと独特.それをJavaScriptで実装して,webブラウザ内で使えるというもの.

だからどうした感が漂う逸品です.こういうのをみると,自分でエディタを書いてみたくなりますね(やらないけど).

幾つかイースターエッグのような物が見つかります.白状するとソースを見たのです.
:emacs Emacsモード.でも余りうまく動かなかった.
:kwak くわっく :)

2008年5月7日水曜日

連休後半に瑞龍寺へ


連休後半は,両親がこちらへ来ていたので,多少は観光のようなことを.ただ,遠来であったことと滞在期間が短かったことから,車で一時間前後の近隣のみとなった.

写真は高岡の瑞龍寺の仏殿(国宝).均整の取れたシルエットには毎回目を奪われます.歴史や建物の説明などはwikipediaの「瑞龍寺(高岡)」の項にも説明あり.

このあと,氷見のフィッシャーマンズワーフに寄って,もの凄い混雑の中,昼食.その後帰宅しました.
Posted by Picasa

2008年5月3日土曜日

金曜日は火曜日の時間割・FreeBSD on VMware workstation

火曜日が休日で、金曜日はその振り替えなのか、火曜日の時間割。こういうのは分かっていても混乱する。

午前中は大学院の講義。環論の初歩で、イデアルや剰余環、準同型写像、準同型定理、環の乗法群などをやって、特に有理整数環の剰余環の乗法群と、その位数としてEuler関数。中国式剰余定理やEuler関数の乗法性、Fermat-Eulerの定理は次回持ち越し。

午後は4年生セミナ。連分数展開の話。連休の影響か、進捗が余り芳しくない。早めに終了。

いくつか作文の宿題があるので、帰宅までそれに取り組む。のだが、こういうときに限って使っているソフトが微妙に不調。VMware workstation 6(6.0.3 build-8004)をMicrosoft Windows XP上で使っていて、ゲストにFreeBSD 6.1を使っている。FreeBSD側で作業をして、CVSにcommitすると(repositoryはネットワーク越しのサーバにある)、5回に1回くらい、commit中にFreeBSDが固まってしまう。

FreeBSDはDHCPでIPアドレスをもらっているのだが、これがexpireしている時にこの症状が出がちな気がする。FreeBSDを7.0にバージョンアップする予定で、深く追求していない。

時々こういうことがあるとはいえ、VMwareの便利さは手放しがたい。とりあえず試してみたい方は、VMware player (無償で提供されている仮想化ソフト)と、FreeBSDや各種Linuxデストリビューションのうち気に入ったものをここからダウンロードして遊んでみることができる。

FreeBSDのinstall/解説本も一頃のようには出版されていないようだけど、手元にまだ残っている本から、後藤大地他「FreeBSDビギナーズバイブル (MYCOM UNIX Books)」を紹介。ネットワークのことをはじめ、Unixのユーザ・管理者としての常識を涵養するには、山口他「新The UNIX Super Text 上 改訂増補版」、「新The UNIX Super Text 下 改訂増補版」が今でもお勧め。細かい各論は、必要に応じて自分で何とかするべし。




2008年5月1日木曜日

月曜日の授業:自然と情報の数理

そういえば貼り付けていなかった。月曜日の自然と情報の数理のスライド:



月曜の午後、このスライドを仕上げていたら、突然Googleに接続できなくなってしまった。
作業は手元のPCにインストールした、OOo Impressで行っていたので大過なかったけど(調べ物にちょっと不自由しましたが)。

多くの大学で、4/28午後にGoogleに接続できない、という事象が発生していたそうな。
これでも大学職員のブログ -情報センター勤務中」の「全国の大学からGoogleへアクセスできず」というエントリ参照。原因は不明の模様。

2008年4月29日火曜日

書評:坪田一男「理系のための人生設計ガイド」

坪田一男著「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス 1596)」を先日購入して読了。

ブルーバックスの本書のページから、目次:
設計1 基礎知識編 成功のためには人生設計が必要だ
設計2 自己分析編 「自分年表」で人生を仮説にする
設計3 経済編 研究者こそ経済的自立が必要だ
設計4 友人・知人編 人的ネットワークを増やすには
設計5 海外ネットワーク編 世界で認められる研究者になる
設計6 ポスト編 母校の教授になるために
設計7 業績向上編 ノーベル賞を狙う気持ちで研究する
設計8 表現編 表現力をつけて社会にアピールする
設計9 インフラ編 会社、学会、NPOを用意する
設計10 時間編 人生設計とは「時間をどう使うか」である
設計11 トラブル編 理系の弱点「危機管理能力」を備えよう


同じ著者の「理系のための研究生活ガイド―テーマの選び方から留学の手続きまで (ブルーバックス)」を大分以前に読んで、それなりに納得させられるところがありました。同書が研究室の中での指針を示している(書名どおり、「研究生活ガイド」)であるのに対し、「人生設計ガイド」は、より広い視野で、研究者としての人生について、一つのあり方を提示したものです。

冒頭p.18, 「良い研究を続けて、それを成功へと導くためには、若いうちからそれなりに道筋を考えて、ある程度の準備を少しずつ進めていくほうがいい」というのが、全体を貫く縦糸でしょう。また、p.22, 「研究に際して、僕たち理系は大まかにゴールを設定し、実験や分析をしながら論理構築をしていく作業を行うだろう。この作業を、自分の人生に当てはめて考えてほしい。その作業こそが「人生設計」なのだ」ともあります。

二章以降は、人生設計とその実現に向けての各論になります。そもそも、自分の研究者人生におけるゴールは何か。本書で言う、バリュー、ミッション、ストラテジーを明確にすることから話が始まります。そしてそれらを現実の世の中で達成することを目標に,より具体的な達成目標へとブレークダウンしていきます。

表題に謳う「理系のための」は,より正確には,「医薬系の」です。理工系でも,ラボで研究するタイプの分野なら割と近いでしょう。逆に,数学や理論物理など,研究の単位が一個人に近いレベルでは,多少調節が必要になります。また,いわゆる文系の場合はだいぶ様子が異なってくるでしょう。

研究者として人生を送っていくにあたって,具体的,実際的なアドバイスを述べた本としては,古くは本多清六から,昭和に入って,渡部昇一の「知的生活の方法 (講談社現代新書 436)」や鷲田小彌太「新 大学教授になる方法」など,多数あります.本書はその流れの中で,最近の一書として出色と思います。