2012年9月11日火曜日

Cole, the 67-th Mersenne number

blog 「読書猿Classic: between / beyond readers」の記事「Three years of Sundays/史上もっとも静かなプレゼンテーション」を大変面白く読んだのだが,少し事実関係を整理したい.もしまだ同記事をお読みになっていない方は,是非ご一読頂きたい.

よろしいですか?

まず,$n$ 番目のメルセンヌ数 $M_n$ というのは,$2^n-1$ のことである($n\ge 1$).すぐに巨大になるが,素数に関連した興味深い性質がいくつもある.例えば,$M_n$ が素数ならば $n$ が素数であることが証明できる.しかし $n$ が素数だからといって,いつでも $M_n$ が素数になるわけではない.例えば$M_{11} = 2^{11} - 1 = 23\times 89$. しかし,$n$ が素数なら,$M_n$ は $n$ より大きい素因数を含むことも簡単に示され,従って大きな素数の探索にしばしば用いられる.

歴史を遡ると,メルセンヌ自身が17世紀に,$M_n$ が素数になる $n$ を小さい方から幾つか列挙したのだが,それが間違いを含んでいた.例えば彼は,$M_{67}$ は素数であるとしていた.

冒頭のブログ記事では,20世紀初頭にColeが学会で発表するまでそれが信じられていた,という調子で劇的な様子を記述しているが,それはそうではない.

リュカは既に,1891年出版の著書で,$M_{67}$が合成数であろう,と述べている(E. Lucas, Theorie des Nombres, p. 376).



しかし,その素因数分解は与えていない.

Coleは,$M_{67}$ の素因数分解,すなわち,$$M_{67} = 147573952589676412927 = 193707721 1 \times 761838257287$$を,論文 The factoring of large numbers, Bulletin of the American Mathematical Society, 10(3), 1903で与えた.冒頭のブログ記事は,その内容を講演したときのエピソードと思われる.

Coleは2つの方法を試し,一つはうまくいかず,もう一つの方で $M_{67}$ の素因数分解を得ている.つまり,$$M_{67} = \left(\frac{1}{2}(u+v)\right)^2 - \left(\frac{1}{2}(u-v)\right)^2$$と書いたときに,$(u+v)/2$の方が満たすべき合同式を,法 $67^2 \times 8 \times 5 \times 7 \times 13 \times 81$ で与えて,$$\frac{1}{2}(u+v) = 1323536760 x + 1160932384,$$ ($x$の係数が上で述べた法,)そこに適当に整数を入れていって,$x = 287$ のとき,つまり $381015982504$ が $$M_{67} = 2^{67}-1 = 381015982504^2 - 380822274783^2 = 193707721 \times 761838257287$$を満たすことから,素因数分解を得ている.

2次篩法などが開発されるのは,1980年代である.

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