2012年4月23日月曜日

Jacobsthal和:mod 4で1の素数は2平方数の和

素数$p\equiv1\pmod4$を$p=a^2+b^2$と表す$a,\,b$を,明示的に与えることを考える($a\equiv1\pmod{4}$, $b\equiv0\pmod{2}$とする).Jacobsthal和が次のように,その解答を与える.

$p$を奇素数($4$で割ったあまりは,最初は指定しない),$p$で割り切れない整数$D$に対して \[ \phi(D) = \sum_{u=1}^{p-1}\left(\frac{u^3+Du}{p}\right), \] とおいて,Jacobsthal和という.ただし,和の中の$(\cdot/p)$は法$p$の平方剰余記号である.

まず$p\equiv3\pmod{4}$なら$\phi(D)=0$を示す.$p=2n+1$とすると,平方剰余記号の基本的な性質から$(a/p)\equiv a^n\pmod{p}$だったから \[ \phi(D) \equiv \sum_{u=1}^{p-1}(u^3+Du)^n = \sum_{u=1}^{p-1}\sum_{j=0}^n \binom{n}{j} D^{n-j}u^{n+2j}. \] 総和を入れ替えて考えると,$u$についての和は冪指数が$p-1$で割り切れるときだけ,つまり$j=n/2$のときだけ$0$でなく,その値は$-1$. よって$n$が偶数の時,つまり$p\equiv1\pmod{4}$のときだけ$\phi(D)\neq 0$.

より単純に,$p\equiv3\pmod{4}$なら$(-1/p)=-1$だから,$u$の項と$-u$の項とが相殺する,と言うことでもある.

さて$p\equiv1\pmod{4}$のときは,上の考察から$j=n/2$の項の寄与$-1$だけがあって, \[ \phi(D) \equiv -D^{\frac{p-1}{4}}\binom{n}{n/2} = -D^{\frac{p-1}{4}}\binom{2m}{m}\pmod{p}, \] ただし$m:=n/2=(p-1)/4)$. さて$D=1$なら,昨日の結果を使って, \[ \phi(1) = \sum_{u=1}^{p-1}\left(\frac{x^3+x}{p}\right)\equiv -\binom{2m}{m} \equiv (-1)^{m+1} 2a\pmod{p}. \] また$2|a|\le p$で,$\phi(1)\leq p-1$より,実は等号 \[ \phi(1) = 2a \] が成立.

さて,$b/a\pmod{p}$が法$p$の$1$の$4$乗根である事に注意すると($p=a^2+b^2\equiv0\pmod{p}$から$(b/a)^2\equiv-1\pmod{4}$),$D^{(p-1)/4}\equiv\pm (b/a)\pmod{p}$. よって \[ \phi(D) \equiv \begin{cases} \pm 2a \pmod{p}\quad \left(\frac{D}{p}\right) = 1,\\ \pm 2b \pmod{p}\quad \left(\frac{D}{p}\right) = -1. \end{cases} \] 上と同様の議論で,これらは実は等号が成立する.

例えば,$p=29$と$D=2$とすると,$\phi(1)/2=-5$, $\phi(2)/2=-2$, $29=(-5)^2+(-2)^2$である……が,符号が合わないような気がするのだが.

Ernst Jacobsthal(1882--1965)はドイツに生まれ,ベルリン大学でG. Frobenius, H. Schwartz,I. Schurらの指導を受け,上に解説した結果を含む学位論文(1906年)を書いている.高木貞治がベルリン大学に留学したのが1898--1900年なので,それこそFrobeniusの講義などで同じ教室に居たりしていたら面白いが(その後,高木はゲッチンゲンのHilbertの元に赴き,「おまえはシュワルツの所から来たのであるからよく知っているだろう」などと,道ばたでレムニスケート函数についての口頭試問を受けたりするのである.「近世数学史談・数学雑談」の「回顧と展望」を参照).Jacobsthalはその後,第一次大戦前後の混乱(とナチの台頭)でノルウェーに脱出し,長年その地で教授職にあったらしい.以上はThe MacTutor History of Mathematics archiveの記述による.

後記(2012/04/23:0955):最後のMacTutorの名称を誤記していたのを訂正.

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