2012年4月13日金曜日

Graham-Rothschildの定理の証明(2・完結)

昨日に引き続き,Graham-Rothschildの定理の証明の続き.次の主張2により証明が完結すると同時に,特別な場合としてvan der Waerdenの定理も従う.

主張2: $S(l,m)$が任意の$m\ge 1$で成立すれば,$S(l+1,1)$も成立.

証明:正整数$r$を任意にとって固定する. \[ C:[1,2N(l,r,r)]\to[1,r] \] が与えられたとする.($N(l,r,r)$は$S(l,r)$が正しいという仮定から存在す る.$N(l+1,1,r)$の候補として$2N(l,r,r)$をとりたい.証明すべきことは, 任意の$r$に対して$N(l+1, 1, r)$が存在して,任意の $C:[1,N(l+1,1,r)]\to[1,r]$に対して,ある$a',\, d'$が存在して,$C(a'+xd')$は $[1,l]$の$l$同値類上定数,ということ).

すると,或る$a,\, d_1,\dots, d_r$が存在して$\forall{x_i}\in [0,l]$, $(i=1,\dots, r)$に対して

  • $a+\sum_{i=1}^{r}x_i d_i \le N(l, r, r)$,
  • $C(a+\sum_{i=1}^{r}x_i d_i )$は$l$同値類に対して定数.
鳩ノ巣原理より,或る$u,\, v\in [0,r]$で$u< v$であり, \[ C(a+\sum_{i=1}^{u}ld_i) = C(a+\sum_{i=1}^v ld_i) \] となるものが存在する($a, a+\sum_{i=1}^k ld_i$, ($k=1,\dots,r$)の$r+1$個の値に対して, その色($C$で写した値)が$r$個しかないので重複が生じる).

よって, \[ C\left(\left(a+\sum_{i=1}^u ld_i\right) + x\left(\sum_{i=u+1}^v d_i\right)\right) \] は$x\in [0,r]$に対して定数.(なので,$a'=(a+\sum_{i=1}^u ld_i)$, $d'=\sum_{i=u+1}^v d_i$としたい). また \[ a + (l+1) \sum_{i=u+1}^v d_i \le 2N(l,r,r). \] よって$S(l+1, 1)$が成立する.これで主張2が示された.

さて$S(1,1)$は自明に成立するから,上の二つの主張から,任意の$l, \,m\ge 1$に対して$S(l, m)$が成立,つまりGraham-Rothschildの定理が示された.また, van der Waerdenの定理は$S(l, 1)$に他ならない.

Graham-Rothschildの定理の原論文は,Proceedings of AMSで公開されている.また,M. Einsiedler and T. Ward, Ergodic Theory: With a View Towards Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)の7章冒頭にも分かりやすく解説されている.

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