2012年4月19日木曜日

2次形式による整数の表現:mod 4で1の素数は2平方数の和

2元2次形式の理論を用いたLagrangeの証明を,Gaussが整理したもので,ガウス 整数論 (数学史叢書)の§182に載っている.Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theory (Graduate Texts in Mathematics), Chap. 5, ならびに,ザギエ,数論入門―ゼータ関数と2次体の2章も参照.

整係数2元2次形式とは,整数係数の2変数2次式の事で,$f(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$, $a,\, b,\,c\in\mathbf{Z}$, とする.$f(x,y)$の判別式$D(f)$を$b^2-4ac$と定義する.係数$a,\,b,\,c$の最大公約数が$1$のとき,$f$は原始的という.また,$f$が簡約2次形式とは,係数が次の条件を満たす時を言うこととする: \[ |b| \le a \le c, \] 更に,一方の等号のみが成立する際は$b\le 0$とする.

整数を成分とする$2$次の行列で行列式が$1$のものの全体を$SL_2(\mathbf{Z})$と書く. ふたつの整係数2元2次形式$f(x,y)$, $g(x,y)$が同値とは, \[ \begin{pmatrix} x'\\ y' \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} x\\ y \end{pmatrix} \quad A \in SL_2(\mathbf{Z}) \] の変数変換で$f(x',y')=g(x,y)$となることとする. 同値な2次形式の判別式は等しい(ことが計算で確認できる)ので, 指定された判別式を持つ原始的整係数2元2次形式を,この同値関係で類別して考えることが出来る.

以下では$a>0$かつ$D(f)<0$なる2次形式のみ考える.このときには,上の同値類のそれぞれに,ただ一つ簡約2次形式が存在することが分かる.

さて,整数$N$が2次形式$f(x,y)$で表されるとは,ある整数$t,u$が存在して, \[ N = f(t,u) \] となることとする.$f$が$N$を表現するなら,$f$と同値な2次形式も$N$を表現 することに注意する.

我々が考えていた問題は,素数$p\equiv1\pmod{4}$が,判別式$-4$の原始的2次 形式$f(x,y)=x^2+y^2$で表される,ということである.さて$p\equiv1\pmod{4}$ より,$1+m^2$が$p$で割り切れるような整数$m$が存在するのだった.すると, \[ g(x,y) = px^2 + 2mxy + \frac{m^2+1}{p}y^2 \tag{*} \] は,やはり判別式$-4$の原始的2次形式である.しかも, \[ p = g(1,0) \] と,$g$は$p$を表現する.

さて,Lagrangeにより,判別式$-4$の2次形式はいずれも同値である事が示されている! したがって,$f(x,y)= x^2+y^2$も$p$を表現する.

(現代風に言えば,虚2次体$\mathbf{Q}(\sqrt{-1})$の類数は$1$なので,$(*)$ 式の2次形式は$x^2+y^2$と同値になり,よって$p=x^2+y^2$と表される,と言う ことである.)

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