2009年7月31日金曜日

隣町セミナ・Scholzの不等式

定例の隣町セミナ.前期はこれで最後である.

金沢に来るとよく立ち寄っていた書店が,明日で閉店である.タッシェンなど洋書がバーゲンされている他は,棚ががらがらになっており哀れを催す.

セミナにはゲストスピーカーの他に,遠来のお客様もあり嬉しい感じ.講演は,2次体のイデアル類群の3部分についてのScholzの不等式に関する構成的なアプローチについてのもの.大変興味深く拝聴した.

虚2次体のイデアル類群の3ランクの大きなものの例はどのくらい知られているか,という話がでて,3ランクが6な例が最大?ということだったのだが,これは後で調査してみよう.

2009年7月26日日曜日

立山浄土山

天候不順で,夏山という雰囲気ではなかったが,久々に山中に身を置きたくなった.

最初は,五色ヶ原で一泊のんびりと思ったが,諸般の事情で日帰りに計画縮小.獅子岳~鬼岳のお花畑を見に行くことにした.

電鉄富山の駅で,タッチの差で電車を一本逃す.次は1時間後で,途方に暮れていたところ,合間に室堂直通バスがあることに気がつく(片道3,000円).室堂を歩き出したのは10時前.ガスが山を隠している.

少し高度を上げると,ガスの中に突入したらしく,視界はないし,雨・風.足下に咲く花々を写真に納めつつ歩く.

浄土山から獅子岳方面に降りていく.富山側から吹き上がってくる風にあおられている内に,こんな天気でがんばってもしょうがない,と思って引き返すことにする.そのまま一ノ越を経由して室堂ターミナルに戻る.約4時間の行動.

帰りも直通バスに乗った.これはお手軽でよい.

写真はpicasawebに掲載してあります:

2009年7月18日土曜日

隣町セミナ・Rabin暗号

恒例の隣町セミナ.今日の話題は暗号,特に公開鍵暗号方式の一つRabin暗号について.

Rabin暗号は,その解読の困難さが,公開鍵の素因数分解と同等であることが証明されている,という意味で,安全性が証明されている.しかし広く普及しているとは言えない.(一方,広く用いられているRSA暗号は,解読の困難さが公開鍵の素因数分解と同等であることは証明されていない.公開鍵を素因数分解すればRSAを破ることはできるが,もしかしたら素因数分解をせずとも解読できるのかもしれない).

Rabin暗号が普及しない1つの理由は,暗号文を平文に復号したときに,平文の候補が4通り出てくる,という欠点のせいかもしれない.しかし,この欠点は,余分に情報を付加するなどして取り除くことができる.今回のお話も,Rabin暗号を一意復号可能に改良することと,計算時間の評価が主題であった.

ただ,暗号(に限らず,いろいろな技術)の普及というのは,本当によいものが普及するのではなく,それまでの状況に大きく左右される.特にインフラと言えるような基盤技術に関してはそうである.というわけで,Rabin暗号の将来が非常に明るいとは,なかなか言えなさそうである.

スピーカの先生の翻訳をリストにしました:

2009年7月15日水曜日

バムとケロ

しばらく前から我が家ではやっている絵本は,島田ゆかの「バムとケロ」のシリーズである.市立図書館で偶然借りてきてから,親子そろってのお気に入り.

ゆったりとしていて,ちょっとひねりのあるストーリーと,なんと言っても細かく書き込まれた絵が面白い.各ページの画面の端々に,小さな文脈があって,それを発見する楽しみがある.一度読んでしまってからも,ストーリーを追う楽しみの他に,画面を隅々まで見つめて,組み込まれた遊びを発見しようとする楽しみがある.

3歳の娘は,「バムとケロのさむいあさ」で,ケロちゃんがお風呂の中でおならをする下りが大好きである.

2009年7月14日火曜日

根体,(最小)分解体,代数閉包

4年生のゼミで,体論の話を聞いていて気がついたというか,思い出したこと.

代数閉包の存在(Steinitz)を示すのは少し議論が必要だが,その前に,多項式が少なくとも一つ根を持つ体(根体)の存在を示す段階がある.これは易しい.

問題は分解体(考えている多項式が一次式の積に分解する体)の存在を示すステップである.代数閉包の存在を既知とすれば,これは当たり前.しかし,代数閉包の存在を示す議論の中に,実は分解体の構成の議論が組み込まれている.

根体の存在から,体を上げれば既約多項式の次数は次第に減っていくのだが,この議論を,文献によっては「帰納法により」と書いていたり,「帰納的に」と書いたりしているので,初学者は混乱するようだ.

分解体の存在を,多項式の次数に関する帰納法で示す場合,帰納法の仮定が何かを注意しておかなくてはならないと思う.Google Booksで検索したら,Birkhoff-MacLaneのAlgebraにはその旨が明確に述べてあった(p. 447, Theorem 4の証明).

2009年7月3日金曜日

隣町セミナ

恒例の隣町セミナ.今回は,慶○大学の博士課程の方の講演.

会場入りの前に時間調整のために立ち寄る書店が,今月一杯で閉店(リンクは北國新聞)との貼紙をみて愕然.市中心部の書店が減って,郊外の大店舗ばかりになっていく傾向が金沢でも如実に伺われる.

講演は,古典的なStickelbergerの定理を広く拡張して,Abel体や総実代数体上AbelなCM体までカバーする結果.大変興味深く拝聴.岩澤主予想が,p部分のχ成分毎に類群を記述するのに対し,Stickelberger型の定理は全体を(実際はp部分だが)大域的に記述していると言う指摘に,なるほど,と思った.