2008年9月30日火曜日

集中講義その2

9/24(水)から土日を挟んで9/29(月)まで、勤務先にて集中講義。1年生から4年生までの数学科の学生が受講する.内容は線形代数.講義内容は担当教員の裁量が大きいのだが、微積分もしくは線形代数の予習復習と位置づけることが多い模様だ.

15回を1週間でまとめてやってしまうので、いろんな話をするよりもメッセージを絞り込んだほうが良いと考えた.

  • 線形代数はベクトルと行列の学問ではなく、ベクトル空間とその間の線形写像の学問である
  • 基底を取ることで、数ベクトルと行列が表れるが、それは基底の取り方による「かりそめの姿」


なので、ベクトル空間の公理的な取り扱いから初めて、部分空間、基底、線形写像、行列表示、基底の取替えによる表現行列の変化などを主に扱った。例としては、一定次数以下の多項式の全体、所謂線形リー環など。


内積や固有値・固有ベクトルの話は触れる程度.グラム・シュミットの直交化法もやらずじまい.

タネ本にしたのは,斎藤正彦先生の「線型代数入門 (基礎数学 (1))」だが,その他いろいろな本を参考にした(基底の個数の一意性など,どのように扱うか微妙な話題については特に).

今の1, 2年生は,下記の本を教科書にしているらしい.

2008年9月23日火曜日

Vandermonde行列の逆行列

Vandermondeの行列式(リンクはWikipedia)というのは、線形代数の初歩で(行列式の辺りで)必ず出てくるもの。

以前から疑問だったのは、この行列式が0でないとき、その行列式を定める行列の逆行列を明示的に書き下す式があるか?ということ。

文献を検索していて、たまたま、Victor-Emil Neagoe, Inversion of van der Monde matrix, IEEE Signal Processing Letters vol.3, No. 4, 1996, pp.119--120 という論文を見つけた。望んでいたそのものだ。

しかし次の疑問は、この事実が1996年まで知られていなかったのか?ということ。Gene Howard Golub, Charles F. Van Loan, Matrix Computationsには、逐次的に逆行列を計算するアルゴリズムが記載されている(リンクはGoogle Books, 同書p. 184--参照)。

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Amazon.co.jpへリンク:

2008年9月16日火曜日

火曜日の授業:数学通論I

学生の皆さんは絶賛夏期休業中ながら,私は今週から後期開始と言ってもほぼ過言ではない.

今週は,隣県某大学にて,教育系の大学院生向けの集中講義.内容は初等数論と暗号.今日の午後から始めて,金曜の夕方まで.自宅からキャンパスまで,高速バスとバスを乗り継いで,片道2時間少々.連日往復するのはつらいので,宿泊することにした.

来週は,勤務校で,数学科対象の集中講義.1年生から3年生までが聞きに来るとのことで,内容は線形代数とその応用の予定.(なので学会は欠席です).

2008年9月10日水曜日

W. Byrde, Sellinger's Round, by G. Gould

ウィリアム・バード(W. Byrde, リンクはWikipedia)は16--17世紀にイギリスで活躍した作曲家。タリスより1世代若い。カトリック教徒として当時は迫害されたが、ミサ曲やモテットの他、鍵盤楽曲にも優れた作品がある。

その中で私が偏愛するのは、Sellinger's Roundという曲。Glenn Gouldが残した録音が大変すばらしい(バード&ギボンズ作品集(紙ジャケット仕様))。

Youtubeに、この曲をBGMにした映像(トロント市内をドライブする映像)を見つけたので掲載。音質は良くないものの、清冽さは紛れもない。