2008年8月31日日曜日

数学者の死

いささか旧聞ながら、Henri Cartan(リンクはWikipedia)が8/13に逝去していたらしい。享年104歳。ブルバキ創立メンバーの最後の一人だったという話。Science Newsに追悼記事が出ている。Bloombergじゃないから、大丈夫(あちこちで報じられたが、BloombergがS. Jobsの訃報を誤って配信した)。

Cartanは代数トポロジーから多変数複素関数論まで広く活躍した数学者だが、私個人はあまり意識することなく、資料としてCartan-Eilenberg, Homological Algebra (Princeton Landmarks in Mathematics)を書棚に並べているくらい。Cartanの直接の学生としては、Douady, Godement, Karoubi, Serre, Thomがいるという(上記Wikipedia)。それだけで驚異。

先日は、可換環論・代数幾何の永田雅宜先生も逝去された(リンクはWikipedia)。反例作りの名人としても有名で、確かAuslanderが、「早く証明しないと、永田が反例を作ってしまう」と弟子達に発破をかけていた、らしい。何かで読んだのだが。
学部の学生の頃、「可換体論 (数学選書 (6))」の初めの2章を苦労して読んだ記憶がある。

マルクス・ジョルジュの「異星人伝説―20世紀を創ったハンガリー人」に掲載のエルデシュ語によると、"They left"ということになるだろう。偉大な数学者達に R.I.P.

2008年8月25日月曜日

原田泰治展

富山県水墨美術館(このURLは?)で開催中の,原田泰治展に出かける.家人と娘と3人連れ.

小学生の高学年の頃,朝日新聞日曜版の一面が,この人の絵と文だった.その時は特にどうとも思わなかったが,今となると少年期の追想と相まって,やはり懐かしいような気がする.

つまり,それ自身の存在で芸術として成り立つと言うよりは,見る人の裡にある思い出を想起させ,それにまつわる感情を刺激することで成り立つ絵画のように思った.マンハッタンやハワイを描いた大きな絵があったが,それはあまりピンと来ない.

だからといって価値が低いと言っているわけではなく,それを求める人が居て,それに応える画家が居て,まずは慶賀すべき事と言わねばならない.

2008年8月23日土曜日

夏休み中の授業:SPP

絶賛夏休み中だけども,夏休みなのは学生の皆さんのみである.8/22(金)はSPP(Science Partnership Project)の授業を一つ担当.朝9:30から午後4時過ぎまで.1コマ50分で5コマ少々話した.対象は,県内某高校の2年生7名.

昨年も別の高校の1年生を担当したのだが,初等数論のさわりを話したところ,あまり好評ではなかった模様.話が抽象的すぎると受け止められたらしい.

今年は,中身はあまり変わらないが,暗号の話としてまとめた.のだが,時間がおしてしまって,肝心のRSAやElgamal暗号のあたりが駆け足になってしまい,反省.

剰余算(modular arithmetic)を,公差が等しい等差数列の加減乗算として導入してみた.同値関係や演算のwell-definedであることに言及しなくて済む.集合を元と見るという飛躍も,なんとなく受け入れてもらえたように思う.如何.

2008年8月22日金曜日

矢野顕子コンサート

8/21, アイザック小杉文化ホールラポールで矢野顕子のコンサート。家人と。
端的にいって、天才。

話の流れで、たまたま聴きにいくことになった。私は矢野顕子のファンというわけでは全然なく、家人が持っているCDを何枚か聴いたことがあるくらいである。

コンサートは、ピアノ弾き語りの形式。生音ではなく、PAを通している。

セットリスト
  1. BAKABON
  2. Dreaming Girl
  3. さようなら
  4. 雷が鳴る前に
  5. My Love
  6. 愛について
  7. Song for the Sun
  8. 変わるし
  9. 湖のふもとで猫と暮らしている
  10. ?
  11. ごきげんわにさん
  12. ごはんができたよ
  13. Rose Garden
  • EC1 David
  • EC2 ひとつだけ
クラシックからジャズ、現代のさまざまなジャンルの音楽が渾然一体となって、矢野顕子の音楽としか言いようのないものになっている。聞いていると、複雑な形をした光の立体が刻々と形を変えるようなイメージが目に浮かぶ(単純化して書くと、Windows Media Playerとか、iTunes playerの視覚効果を立体にしたようなもの)。演奏の最中にときどき歌詞が飛んでハミングになったり、ピアノパートが伸びたりするのはご愛嬌である。

クラシック音楽のように、大枠があって、それを身につけたうえで個性を出すというジャンルの音楽の対極にいるアーティストだと思った。音楽を吸収して再構成し、それを演奏するという巨大な能力の上に成り立っている、一回限りの存在である。そういう意味で、天才である。

糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」で、坂本龍一相手のインタビュー「矢野顕子について坂本龍一くんと話そう。」が行われている。その第四回で坂本は端的に「天才でしょう」と語っている。

演奏中のMCは、かなりたわいのない話に終始していた。リラックスした雰囲気であった。

2008年8月19日火曜日

ハミング「研究にどう取り組むべきか」

符号理論を勉強すると必ず目にする、ハミング距離などに名前をのことしているRichard Hammingが、1986年に行った講演「研究にどう取り組むべきか (You and your research)」の日本語訳が公開されている。

今津さんの「第一級の仕事に関するリチャード・ハミングの観察と考察」というエントリを参照。原文(講演筆記)と、その邦訳がリンクされている。

「非常に意義深い研究と認知されるようなもの」、「ノーベル賞級の研究」をする為の指針を明快に論じている。曰く、重要な研究をする、研究に対して途方もない情熱を注ぐ(真に第一級の仕事をするのに必要と思われる深い傾倒)、正しい方向に努力する、他の人が土台に出来るような研究をする、読まれるような論文を書く、云々。

ハミングの著書、「Art of Doing Science and Engineering: Learning to Learn」の最後の章が、同じタイトルである。残念ながら絶版との事で、Amazon.comのSearch Inside!で瞥見したのみ。Kindleならすぐに読めるらしい。

2008年8月12日火曜日

大日岳(富山県・2501m)登山

2008/8/10(日), 所属山岳会(ジャンダルム山岳会, リンク修正8/18)の山行で、大日岳(富山県・2501m)に、称名滝登山口から日帰り。会員が私を入れて4名、入会希望者が1名の計5名であった。

登山口出発が6:40, 下山したのが18:30頃と、12時間行動になってしまった :) しかし、久々に全力で夏山を登り、愉快痛快。

登山道は一本道で迷いようがない。牛ノ首付近で両側が切れ落ちた露岩帯の通過があるのに気をつけなければならない。今回は夕方まで晴天だったが、稜線や大日平付近で雷雨に遭うと大変恐ろしいことになるだろう。

写真は↓

2008年8月2日土曜日

木曜日はセミナ・Hasse第二回

午後一で、SPPの事前打ち合わせ。高校生向けに、大学の理系学部の教員が最新の科学のトピックスを解説し、実験実習などを指導するという催し。もう四~五年にわたって実施されているように思う。

昨年までは、実施のお世話をする委員だったのだが、今年はそちらはお役御免。講師として参加する。例によって暗号の話。

実施高校二校の先生方総勢十数名と、理学部の担当教員十数名とが、講義内容や、高校での授業進捗度などの細かいすりあわせ。

終わってすぐ、隣町でのセミナの為移動。HasseのAbel体の類数に関するモノグラフを読む会2回目。私にとっては、ドイツ語の勉強にもなって大変有難い機会である。

終了後の会食では、志村先生の自伝「記憶の切繪図―七十五年の回想」について話が弾んだ。